ロジスティック回帰モデルは脊椎固定術後早期の手術部位感染症を予測する:後向きコホート研究★

2024.07.31

Logistic regression model predicts early surgical site infection after spinal fusion: a retrospective cohort study

Z. Ge*, X. Liu, X. Jing, J. Wang, Y. Guo, H. Yang, X. Cui
*Shandong Provincial Hospital Affiliated to Shandong First Medical University, China

Journal of Hospital Infection (2024) 149, 65-76


目的

この研究は、脊椎固定術後早期の手術部位感染症(SSI)を予測するための術後の炎症マーカーに基づいた診断モデルを開発することを目的とした。

方法

この後向き研究で、我々は、炎症マーカーの傾向を SSI 群と非 SSI 群の間で解析した。データは、訓練コホートと検証コホートに無作為に分けた(比 7:3)。SSI についての変数を段階的ロジスティック回帰により解析し、予測モデルを開発した。モデルを評価するために、その感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率、曲線下面積を検証コホートで解析した。キャリブレーションプロットと決定曲線分析を使って、モデルのキャリブレーションと臨床的有用性を評価した。

結果

手術後 7 日目に、炎症マーカーの有意な変化を観察した。予測モデルには、手術後 7 日目における 4 つの変数を組み入れた。すなわち、体温、C 反応性蛋白質、赤血球沈降速度、好中球数である。これらのデータの 2 値処理の後、単純化されたモデルは、訓練コホートにおいて、曲線下面積が 0.86 (95%信頼区間[CI]、0.81 ~ 0.92)を達成し、検証コホートにおいて、0.9(95%CI、0.82 ~ 0.98)を達成した。キャリブレーションプロットと決定曲線分析によって、提案したモデルが SSI の診断に有効であったことが示された。

結論

我々は、脊椎固定術後早期の感染を診断する予測モデルを開発し、妥当性を確認した。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

脊椎固定術後の感染率は 0.7%~ 16%と幅があり、発生するとインプラント抜去、固定失敗、時に生命予後に影響するような重篤な SSI となることがある。その結果、入院期間の延長、医療費の増大に加え、患者の QOL を著しく低下させるため、早期診断・早期治療は重要である。近年では AI(人工知能)を使った SSI予測モデルもある。一方、SSI の診断には培養検査が必須であり、結果判明に時間を要するため、早期診断には培養以外の方法が必要となり、本論文のような予測モデルが作成された。しかしながら、後方視的研究であり、症例数も少ないため、より良い予測モデルを作成するためには、もっと大きなサンプル数で前向きな多施設研究が必要である。

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