メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)配列型 8(USA300)の台湾における拡散
Dissemination of meticillin-resistant Staphylococcus aureus sequence type 8 (USA300) in Taiwan Y-C. Huang*, C-J. Chen, A-J. Kuo, K-R. Hwang, C-C. Chien, C-Y. Lee, T-H. Wu, W-C. Ko, P-R. Hsueh *Chang Gung Memorial Hospital at Linkou, Taiwan Journal of Hospital Infection (2024) 149, 108-118
背景
台湾では、過去 20 年間のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:MRSA)臨床分離株のうちで、配列型(ST)239 と ST59 が、2 つの主要なクローンであった。USA300(ST8)は、南北アメリカに蔓延していたが、その外の地域ではそうではなかった。最近、USA300(ST8)が、台湾に出現し、検出されることが増えた。そこで、我々は、MRSA 分離株における USA300 の役割を探るために、島全体で調査を実施した。
方法
台湾の 6 つの参加病院のそれぞれから、2020 年に検出された血流からの MRSA 分離株 100 株を集め、特徴を明らかにした。各病院の ST8 分離株の最初の 10 株は、全ゲノムシークエンシングによって更に解析した。
結果
MRSA であることが確認された分離株 590 株において、合計で 22 の pulsotype と 21 の ST が特定された。pulsotype AI/ST8 の株が、特定された中で最もよく見られた系統で、31.7%(187株)を占め、6 つのうち 5 つの病院で優勢であった。続いて、pulsotype A/ST239(14.7%)、pulsotype C/ST59(13.9%)、pulsotype D/ST59(9.2%)であった。pulsotype AI/ST8 の分離株 187 株のうち、特徴によって、184 株が USA300 とされ、3 つの主要な sub-pulsotype にクラスターを形成し、78%を占めた。、全ゲノムシークエンシングを行なった ST8 の分離株 60 株の 90%は、3 つの主要なクレードでクラスターを形成した。
結論
2020 年に、USA300 は、台湾で最もよく見られた MRSA のクローンとなり、島全体の血流からの MRSA 分離株の 30%超を占めた。台湾で流行している USA300 単離株の大部分は、多くの機会により持ち込まれ、その土地の少なくとも 3 つのクレードに進化することに成功した可能性がある。MRSA USA300 は、南北アメリカの外の地域である台湾でその役割を確立することに成功した。
監訳者コメント:
台湾における MRSA の USA300(ST8)株の疫学的調査。USA300 株はアメリカを中心に流行している難治性皮膚感染症や壊死性肺炎などを惹起する高病原性株で、日本においては流行は限定的であるが、近年では市中だけでなく院内にも伝播してきており、注目すべき株である。
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