病院全体でのカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌による医療関連アウトブレイク:仕出し施設と台所における電動床洗浄機のリスク★

2024.04.06

Hospital-wide healthcare-associated carbapenemase-producing Enterobacterales outbreak: risks of electric floor scrubbers in catering facilities and kitchens

A. Benbow*, M. Clarke, C. Yates, R. Montgomery, K. Staniforth, T. Boswell, K. Prescott, N. Mahida
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2024) 146, 59-65


背景

カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)は、不良な臨床転帰と関連している。また、医療環境で急速に広まる可能性がある。環境リザーバーが、院内感染のアウトブレイクにおいて重要な役割を果たすことがあることが、ますます認識されている。

目的

1 つの組織内の 2 つの独立した病院で数年間続いた CPE のアウトブレイクについての調査と制御について記述すること。

方法

複数の病棟レベルでの CPE の交差伝播の調査。いくつかの散発例もあった。病棟環境、仕出し施設、電動床洗浄機の環境サンプリングを実施した。

結果

19 か月間に亘って、11 例の患者が、医療に関連したニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ(NDM)産生エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)の保菌者であると特定され、更に 1 例の患者が、NDM 産生大腸菌(Escherichia coli)の保菌者であった。E. cloacae分離株は、パルスフィールド・ゲル電気泳動によるタイピングで区別できず、単一の感染源からの感染であったことを支持している。環境サンプリングでは、病院の仕出し施設の掃除に使われる電動床洗浄機と、それに関連したトイレの汚染が見つかった。アウトブレイクに対する標準的な対応策で、病棟のアウトブレイクの制御が達成された。散発例と病院全体での交差伝播は、中央の食品取扱部門への介入後、感染していた床洗浄機の使用をやめることで、制御された。電動床洗浄機は、実験条件下で、グラム陰性細菌を周囲の環境中にまき散らす可能性があることが分かった。

結論

このアウトブレイクの報告は、仕出し施設と台所が、医療現場での腸内微生物の広範囲に亘るアウトブレイクに関わる可能性があることを証明している。これは、CPE による重大な環境汚染が起こる際に電動床洗浄機が果たす可能性のある役割を示した最初の報告でもあり、院内伝播での役割を示している可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

電動床洗浄機が CPE のアウトブレイクの一因として考えられた報告である。見逃しやすいところであり、アウトブレイクのリスクとして認識する必要がある。

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