冠動脈バイパス術後の手術部位感染症における性差:後向き観察研究★★

2024.04.06

Sex differences in surgical site infections following coronary artery bypass grafting: a retrospective observational study

M. Boyle*, R. Vaja, M. Rochon, S. Luhana, M. Gopalaswamy, S. Bhudia, S. Raja, M. Petrou, C. Quarto
*Brompton and Harefield Hospitals, Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2024) 146, 52-58


背景

心臓手術後の手術部位感染症(SSI)は、医療提供者にとって重大な問題となる。手術の技術や感染制御対策の進歩にもかかわらず、SSI は、医療サービスにとってかなりの経済的負担となっているだけでなく、依然として、疾患や死亡の主要な原因となっている。現時点での文献は、心臓手術後の SSI の発生率には再現性のある性差が存在することを示唆している。我々は、群間における原因微生物の差を検出するだけでなく、冠動脈バイパス術(CABG)後の胸骨の SSI の性特異的で予測可能なリスク因子を評価することも目的とした。

方法

UK の 1 つの病院組織で、2012 年 1 月から 2022 年 12 月の間に単独 CABG を受けた成人患者が組み入れられた。10 年間に亘るこの後向き観察研究で、合計で 10,208 例の患者が組み入れ基準を満たした。術前のリスク因子を、単変量解析を使い特定した。性別と微生物あるいはグラム染色との間の従属関係を評価するために、Yates の連続性補正とともにPearson の χ2 検定を実施した。

結果

合計で、8,457 例の男性のうち 181 例が胸骨の SSI を発症し(2.14%)、1,751 例の女性のうち 128 例が胸骨の SSI を発症した(7.31%)。男性患者は、グラム陽性菌による SSI を発症する可能性が有意に高いことが分かり、一方、女性患者は、グラム陰性の原因微生物を持っている可能性が高かった(P < 0.00001)。男性患者では、ブドウ球菌属が原因微生物となる可能性が統計的に高かった。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、男性の群と比べて、女性のコホートで 2 倍多くみられたことが分かった。

結論

我々の研究で、CABG 後の胸骨の SSI の原因微生物およびグラム染色には、男性と女性で統計的に有意な差があることが分かった。男性患者では、グラム陽性菌と関連した SSI が主で、一方、女性の SSI の病原体は、グラム陰性菌である可能性が上昇している。両コホートの術前の背景リスクプロファイルは、インスリン依存性糖尿病があり三枝病変のある冠動脈疾患があることも含めて、類似している。これらの結果を考えると、我々は、SSI の治療戦略を、性別と、それに関連するリスクプロファイルに合わせるべきなのだろうかという問いが出てくる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

心臓バイパス手術における手術部位感染症(SSI)の起炎菌について性差を示した単施設での後方視的観察研究である。この研究を実施した施設での SSI の発生率は男性:女性 = 2.14%: 7.31%と性差が認められており、乳房組織との関連性が考えられているが明確な性差を説明できるものがないのが現状である。心臓外科手術での性差を考慮したガイドラインの作成の必要性については、さらなる検証が必要であろう。

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