中国における手術部位感染症の発生率

2024.04.06

The incidence of surgical site infections in China

J. Lin*, Y. Peng, L. Guo, S. Tao, S. Li, W. Huang, X. Yang, F. Qiao, Z. Zong
*Sichuan University, China

Journal of Hospital Infection (2024) 146, 206-223

手術部位感染症(SSI)は、よくみられる種類の医療関連感染症である。2010 年以降の研究に基づき、中国本土における SSI 発生率を明らかにするために文献レビューを実施した。術後患者 30 例以上を対象とした適格研究 231 報を含み、そのうち 14 報は手術部位に関わらず全 SSI のデータを報告、217 報は特定部位の SSI を報告するものであった。SSI の全発生率は中央値 2.91%(四分位範囲 1.05% ~ 4.57%)、統合値 3.18%(95%信頼区間 1.85% ~ 4 .51%)であった。また、SSI 発生率は手術部位によって著しく異なり、甲状腺手術ではもっとも低く(中央値 1.00%、統合値 1.69%)、結腸直腸手術ではもっとも高かった(中央値 14.89%、統合値 12.54%)。術後 SSI と関連するもっとも頻度の高い微生物の種類は、さまざまな腹部手術後では腸内細菌目細菌、心臓手術後または神経学的手術後ではブドウ球菌であった。SSI が及ぼす影響を検討した研究は、死亡率、入院期間(LOS)、医療関連の追加経済的負担について、それぞれ 2 件、9 件、5 件であり、そのすべての研究で、SSI 患者における死亡率増加、LOS 延長、SSI と関連する医療費増加が確認された。本研究の結果より、中国において SSI は依然として相対的に頻度が高く、患者の安全面への重大な脅威となっていることが明らかになり、さらに対策を必要とする。SSI に対処するために、情報技術を活用して統合基準を用いた全国的 SSI サーベイランスネットワークを構築すること、ならびに地域データと観察に基づく対応策を調整し実行することを提唱する。中国における SSI の影響から、さらなる研究の必要性があることを、われわれは強調する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

中国本土の病院における SSI に関する報告のレビュー。DX が進んでいる中国だが、共通した基準に基づく SSI に関する全国的サーベイランスは行われていないようだ。

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