シンガポールの新生児 ICU における水を使用しない集中治療室(ICU)診療に関する医療従事者の知識・態度・実践および認識されている課題

2024.04.06

Knowledge, attitudes, practices, and perceived challenges for healthcare workers on waterless intensive care unit (ICU) care at a neonatal ICU in Singapore

S. Buvaneswarran*, M.C.W. Chua, Z. Amin, X. Wang, J.M. Low
*National University Children’s Medical Institute, National University Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2024) 146, 44-51



背景

患者治療区域から流しを取り除くことを含む、水を使用しない診療の実施は、集中治療室(ICU)などの高リスク区域での水系感染を減少させるための新たなアプローチである。しかし、このアプローチへの移行を成功させるためには、従来の感染対策からの大幅な変更と、医療従事者による受容が必要である。

目的

標準的な感染対策を実施している病棟での業務から、水を使用しない ICU 診療を実施する病棟での業務に移行した医療従事者を対象に、知識・態度・実践および認識されている課題を調査した。

方法

本研究は、単一病院の 3 次新生児病棟で勤務する医療従事者を対象に、カスタマイズした30 項目の自己申告式調査質問票を用いて実施した。

結果

参加率は88.6%(114 名中 101 名)で、参加者の内訳は 66.3%(101 名中 67 名)が看護師、31.0%(101 名中 31名)が医師、3.0%(101名中 3名)がコメディカルであった。90.1%(101 名中 91 名)が肯定的な態度を示し、53.5%(101 名中 54 名)が水を使用しない ICU 診療に関して十分な知識を有した。83.1%(101 名中 84 名)が、自身の手が目に見えて汚れているときに、手指衛生の適切な方法に従っていた。水を使用しない ICU 診療の主な課題としては、個人(46.5%[101 名中 47 名])および患者(22.8%[101 名中 23 名])の衛生の低下が認識されていた。全体で 43.6%(101名中 44 名)が皮膚関連疾患の増加を報告し、10.9%(101 名中 11 名)がそれを理由に医師の診察を受けなければならず、このうち64.0%(11 名中 7 名)は皮膚疾患の既往があった。

結論

水を使用しない ICU 診療について、全体として良好な態度および実践が認められるが、医療従事者は衛生と皮膚疾患に関して特別な懸念を有している場合があり、この点に対処する必要がある。水を使用しない ICU 診療に移行する病棟では、同様の調査を実施することで、知識・態度・実践のギャップが特定されることにより、コンプライアンスを向上させるための有用な情報が得られると考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

院内において水がしばしば院内感染の原因になるため、いっそのことシンクなどを取っ払ってしまおうという発想があるらしい。そんな戦略に対する医療従事者の意識や不安に関するアンケート結果をまとめた論文。ゼロベースで感染対策を考える、という点では興味深い内容ではある。

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