外傷による骨折に対する整形外科手術後の手術部位感染症のリスク因子:コホート内症例対照研究
Risk factors for surgical site infection following orthopaedic surgery for fracture by trauma: a nested case-control study T. Sato*, K. Shibahashi, M. Aoki, D. Kudo, S. Kushimoto *Tohoku University Hospital, Japan Journal of Hospital Infection (2024) 145, 52-58
背景
手術部位感染症(SSI)は、医療費の増加と患者 QOL の低下を伴う。
目的
外傷による骨折に対する整形外科手術後の SSI の特異的かつ修正可能なリスク因子を特定した。
方法
本コホート内症例対照研究では、全国的な外傷登録である日本外傷データバンク(JTDB)のデータベースを用いた。JTDB において、2004 年 1 月から 2019年 5 月までに病院 280 施設から登録された患者データを検索した。修正不可能な因子について補正を行った傾向スコアマッチングを用いて、SSI を発症した患者と、SSI を発症せず、対照被験者として特定された患者を組み入れた。マルチレベル混合効果ロジスティック回帰モデルを用いて、整形外科外傷手術後の SSI に関連するリスク因子を検討した。
結果
全体で患者 15,910 例を解析に組み入れた。これらの患者のうち、377 例(2.4%)が SSI を発症した。傾向スコアマッチングの後、SSI 発症患者 258 例と、マッチさせた SSI 非発症患者 2,580 例を選択した。マルチレベル混合効果ロジスティック回帰分析では、24 時間以内の輸血が、整形外科骨折手術後の SSI の有意なリスク因子であった(オッズ比[OR]1.51、95%信頼区間[CI]1.06 ~ 2.13)。整形外科骨折手術後の SSI に関する創外固定、経カテーテル動脈塞栓術、止血帯の OR(95%CI)値は、それぞれ 1.40(0.96 ~ 2.03)、1.66(0.81 ~ 3.38)、2.99(0.60 ~ 14.87)であった。
結論
以上の結果から、整形外科外傷手術後の SSI に関連するリスク因子である、24 時間以内の輸血を行う際には、注意が必要であることが強調される。
監訳者コメント:
以前から輸血は手術部位感染症の危険因子の一つとして知られている。本研究は日本からの報告であり、外傷による骨折の術後感染対策のエビデンスの一つとして有効に活用できるだろう。
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