医療マスク着用義務の解除が院内 COVID-19 の発生率に及ぼす影響
Impact of removing the healthcare mask mandate on hospital-acquired COVID-19 rates R. Mehra*, B.J. Patterson, P.A. Riley, T.D. Planche, A.S. Breathnach *St George’s University Hospitals NHS Foundation Trust, UK Journal of Hospital Infection (2024) 145, 59-64
背景
マスク着用義務化方針は、パンデミックを通して、院内 SARS-CoV-2 感染を減少させるために採用されたいくつかの手段のうちの 1 つであった。多くの国で医療マスク着用義務は解除されているが、新たな SARS-CoV-2 変異株や、他の呼吸器ウイルス流行のリスクは残っている。
目的
医療マスク着用義務の解除による影響を明らかにした。
方法
大規模教育病院において、2022 年の 40 週間にわたり、対照群を置いた分割時系列デザインを用いて、SARS-CoV-2 感染を解析した。介入は、26 週時点での大部分の病棟における職員/面会者の外科用マスク着用方針の解除とし(介入群)、一部の特定病棟ではマスク着用方針を継続した(対照群)。院内 SARS-CoV-2 感染率を、基礎となる市中感染率により補正した。
結果
SARS-CoV-2 感染が急増する中で、介入群において、職員/面会者のマスク着用義務の解除に、院内 SARS-CoV-2 感染発生率の統計学的有意な変化との関連は認められず(発生率比 1.105、95%信頼区間 0.523 ~ 2.334、P = 0.79)、遅発性の影響を示唆する、介入後の傾向も認められなかった(1.013、0.932 ~ 1.100、P = 0.76)。対照群でも、即時性または遅発性の感染率の変化は認められなかった。
結論
職員/面会者のマスク着用方針の解除が、院内 SARS-CoV-2 感染発生率に有意な影響を及ぼすというエビデンスは認められなかった。これは、マスクがパンデミックを通して無効であったことを証明するものではなく、免疫が広範に認められ、疾患重症度が低下した時点で、医療マスク着用義務を解除することの正当性を証明する、一定の客観的エビデンスを提供するものである。
監訳者コメント:
コロナ禍以前は、患者に医療従事者の顔を見せることを目的として、マスクをなるべく外す、といった活動も散見されたが、コロナ禍以降はユニバーサルマスキングが当たり前になった。本研究はユニバーサルマスキングの前後で医療関連コロナ感染の増減がなかったことを示している。体調不良時の出勤自粛などと合わせて行うことで、よりその効果は高まると思われるが、最終的には各医療機関でメリット、デメリットを踏まえて方針を決めるべきものと考えられる。
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