バングラデシュの 3 次病院の医師における抗菌薬適正使用支援プログラムの認識と抗菌薬の処方パターンの決定因子:今後の方針と実践への影響★

2024.02.29

Perceptions of antibiotic stewardship programmes and determinants of antibiotic prescribing patterns among physicians in tertiary hospitals in Bangladesh: implications for future policy and practice

S.A. Sumon*, M.M.U. Anwar, F.M. Akther, A.S. Priyanka, T. Tamanna, A. Rahman, M.S. Islam, M.G.D. Harun
*Infectious Diseases Division, icddr,b, Dhaka, Bangladesh

Journal of Hospital Infection (2024) 144, 56-65



背景

不合理な抗菌薬の使用や、効果的な抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)の欠如のために、抗菌薬耐性(AMR)の懸念される増加が起こっていて、普通の感染症が生命を脅かすものになっている。

目的

バングラデシュの 3 次治療病院における ASP、AMR、抗菌薬の処方に関する医師の意識、認識、実践について調べること。

方法

病院に基づくこの横断的調査は、バングラデシュの 11 の 3 次治療病院で、2020 年 9 月から 2021 年 1 月に実施された。半構造化した質問票を使った対面の面接でデータを収集した。STATA Version 13 を使い、記述的分析と多変量解析を実行した。

結果

合計で 559 名の医師がこの調査に登録された。全体では、40.6%(95%信頼区間[CI]36.5~ 44.8)の医師が ASP を知っていると報告し、この数字は、公立病院の方が、私立病院と比べて、高かった(43.8%対 27.1%)。調べた中で、ASP の計画のある病院はなかった。過半数(55.1%)の参加者は、抗菌薬の選択について、ASP のフィードバックを受けてもかまわなかった。回答者の30.9%のみが、微生物学的検査の結果を待って抗菌薬の処方をすると述べたが、広域スペクトル抗菌薬の経験的な使用、臨床検査結果の遅れ、薬剤耐性の患者の存在等の問題があった。対照的に、ASP を知っている医師は、臨床検査結果を待って抗菌薬を処方する可能性が 33%(補正オッズ比 0.67、95%CI 0.45 ~ 0.98、P = 0.033)低かった。しかし、医師の 42.5%は、処方の際に患者が抗菌薬を購入することができるかを考慮していた。

結論

医師の ASP や抗菌薬の合理的な処方についての基礎的な知識が標準に達していないことが分かった。バングラデシュの AMR と戦うには、状況に特異的な統合された ASP 活動、ガイドラインの入手可能性と使用、臨床検査施設の改善が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


バングラデシュにおける ASP 活動の推進には乗り越えるべき多くのハードルがありそうである。まず、 ASP を実践する医師の意識である。ガイドラインの認知、感染症検査の実施、結果報告と ASP の受容などを国家的プロジェクトとして実施する必要があるだろう。一方で検査施設の設備も決して十分ではなく、ハード面での改善も必要である。ちなみに日本で 2018 年に実施された「全国の診療所医師を対象とした抗菌薬適正使用に関するアンケート調査」(n=267)では、 AMR アクションプランを「全く知らない」と「名前だけ知ってる」を合わせると 77%、また感冒に抗菌薬を習慣的に処方しているは 0.9%、細菌性二次感染の予防と重症化防止が 55%と、日本においてもまだまだ ASP 活動は十分に浸透しておらず、さらに活発化させる必要がある。

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