前向き細菌全ゲノムシークエンシングに基づくサーベイランスプログラムによる、小児腫瘍患児における医療関連感染症伝播の包括的な早期発見

2024.01.31

A prospective bacterial whole-genome-sequencing-based surveillance programme for comprehensive early detection of healthcare-associated infection transmission in paediatric oncology patients

H. Hakim*, H.L. Glasgow, J.N. Brazelton, C.H. Gilliam, L. Richards, R.T. Hayden
*St. Jude Children’s Research Hospital, USA

Journal of Hospital Infection (2024) 143, 53-63



背景

細菌全ゲノムシークエンシング(WGS)による遺伝的関連性の決定は、疫学的にアウトブレイクが疑われる場合の調査における重要なツールである。

目的

本前向きコホート研究は、小児腫瘍病院の患児におけるほぼすべての細菌性病原体伝播の早期発見を目的とした包括的な前向き細菌 WGS に基づくサーベイランスプログラムの評価を行った。

方法

2019 年 1 月から 2021 年 12 月に入院患者と外来患者の両方から前向きに採取した臨床診断検体から培養した細菌分離株について、ルーチンの WGS およびコアゲノム複数部位塩基配列タイピング(MLST)を実施して、分離株の遺伝的関連性を決定した。それより以前の2018 年 1 月から 12 月に採取されていた分離株を後向きに解析し、過去または進行中の伝播を同定した。複数患者からなるクラスターを調べて、時間・空間的な疫学的関係に基づいて、可能性のある伝播イベントを同定し、介入を実施した。

結果

患者1,025 例から採取された細菌分離株計 1,497 株に WGS を実施した。遺伝的な関連性を認める計 259 のクラスターが検出され、このうち患者 38(3.7%)を含む 18 の複数患者クラスター(6.9%)が同定された。16 のクラスターはそれぞれ患者 2 例を含み、2 つのクラスターはそれぞれ患者 3 例を含んでいた。調査の後、疫学的に可能性のある伝播関係が、5 つの複数患者クラスター(27.8%)で同定された。複数患者クラスターで、通常の疫学的サーベイランスにより疑われたものはなかった。

結論

病院内伝播の早期発見を目的とした細菌 WGS に基づくサーベイランスにより、通常の疫学的な方法では認識されなかった、いくつかの限られた複数患者クラスターが検出された。ゲノムサーベイランスは、不必要な調査を減らしながら、効率的に焦点を当てた介入を助けた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

膨大な菌株のWGSによる解析が、いよいよ実用段階にはいったことになる。

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