メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:MRSA)の予防に対するリアルタイムの時空間マッピングサーベイランスシステムの費用対効果
Cost-effectiveness of a real-time spatiotemporal mapping surveillance system for meticillin-resistant Staphylococcus aureus prevention Y. Cai*, E.C. Philips, S. Arora, J.X.Y. Sim, W. Chow, N. Nazeha, S. Whiteley, M.Y.X. Auw, D.C. Tiang, S.L. Neo, W. Hong, I. Venkatachalam, N. Graves *Duke-NUS Medical School, Singapore Journal of Hospital Infection (2024) 143, 178-185
目的
病院のデジタルツインに基づく感染のサーベイランスシステム(4D-Disease Outbreak Surveillance System[4D-DOSS])がシンガポールで開発中である。これは、ほぼリアルタイムの感染のサーベイランスとマッピング能力を提供する。この初期の経済モデリング研究は、4D-DOSS の費用対効果が高い可能性があるかどうかを評価するために、関心のある病原体としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:MRSA)を用いて実施された。
方法
MRSA のサーベイランスに対して 4D-DOSS を採用することの費用対効果を、病院からの視点で、現在のやり方と比べて評価するために、MRSA の定着と感染の可能性をシミュレーションするマルコフモデルを開発した。サイクルの持続期間は 1 日、モデルの範囲は 30 日とした。確率的感度分析を実施し、費用対効果の確率を報告した。シナリオ分析と情報の価値分析を実施した。
結果
基本ケースシナリオで、4D-DOSS の 10 年間の実行/維持費用を$0 としたとき、4D-DOSS が費用対効果の高いものとなる可能性は 68.6%であった。それよりは悲観的だが妥当なシナリオで、MRSA の伝播を減少させることにおける 4D-DOSS の有効性を基本ケースシナリオの 1/4 とし、10 年間の実行/維持費用を$100 万としたとき、4D-DOSS の採用が費用対効果の高いものとなる可能性は 47.7%であった。情報の価値分析では、MRSA の費用が不確かであることが、モデルが不確かであることの最も大きな原因と示された。
結論
この初期段階のモデリング研究では、現在の支払い意欲の閾値で、4D-DOSS の費用対効果が高いものとなる可能性が高い状況が明らかになり、モデルの不確かさを減少させるために更に研究することは無駄ではないパラメーターが特定された。これ以外の薬剤耐性微生物を組み入れることによって、4D-DOSS の費用対効果の評価は、より徹底したものになるだろう。
監訳者コメント:
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