基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli)による菌血症発症の予測因子:システマティックレビューおよびメタアナリシス
Predictors for onset of extended-spectrum beta-lactamase-producing Escherichia coli-induced bacteraemia: a systematic review and meta-analysis H. Namikawa*, W. Imoto, K. Yamada, Y. Tochino, Y. Kaneko, H. Kakeya, T. Shuto *Osaka Metropolitan University, Japan Journal of Hospital Infection (2023) 142, 88-95
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌(Escherichia coli)菌血症は、適切な抗菌薬による治療の遅れや、治療法の選択肢が限られていることによって、好ましくない臨床転帰となる可能性がある。したがって、ESBL 産生大腸菌による菌血症の予測因子を明らかにすることが、臨床転帰の改善にとって極めて重要である。しかし、文献検索では、ESBL 産生大腸菌による菌血症の予測因子についてのメタアナリシスを組み入れている研究は見つからなかった。そこで、ESBL 産生大腸菌による菌血症の予測因子についての現時点でのエビデンスを評価するために、このレビューに着手した。PubMed、Web of Science、Cochrane Library のデータベースを、2000 年 1 月から 2021 年 9 月に発表された関連のあるすべての論文を探すために検索した。このシステマティックレビューでは、合計で 2,325 例の大腸菌による菌血症患者と 850 株(36.6%)の ESBL 産生菌から成る 10 件の観察研究を評価した。メタアナリシスでは、過去の抗菌薬療法[統合したリスク比(RR)2.72、P<0.001]、特にセファロスポリン系(統合した RR 4.66、P < 0.001)およびキノロン系(統合した RR 5.47、P < 0.001)によるものと、尿道カテーテルの使用(統合した RR 3.79、P < 0.001)が、ESBL 産生大腸菌による菌血症を予測した。上記のリスク因子のある患者の抗菌薬療法は、ESBL 産生大腸菌による菌血症の可能性を、ESBL を産生しない大腸菌による菌血症の可能性と比較検討して、選択すべきである。特定されたリスク因子の適切な調節が、ESBL を産生しない大腸菌による菌血症と比べて、ESBL 産生大腸菌による菌血症のリスクを軽減できるかどうかを明らかにすることが重要である。
監訳者コメント:
ESBL 産生大腸菌菌血症の予測因子に関するシステマティックレビューおよびメタアナリシス。過去の抗菌薬療法(セファロスポリン系またはキノロン系薬)や尿道カテーテルの使用が予測因子として有意であった。おそらくこれらの因子は、体内における「ESBL 産生菌の選択」および感染症発症そのものの両方の予測因子と考えられる。この 2 つを有する患者が大腸菌菌血症を発症した場合、ESBL 産生を想定する必要がある。
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