迅速かつ簡便な multi-locus variable number tandem repeat analysis:肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)アウトブレイクのスクリーニングのための信頼性の高いツール★★

2023.11.30

Rapid, simple multi-locus variable number tandem repeat analysis: a reliable tool for Klebsiella pneumoniae outbreak screening

C. Legouge*, P. Bidet, M. Gits-Muselli, A. Cointe, C. Courroux, A. Birgy, S. Bonacorsi
*Hôpital Robert-Debré, France

Journal of Hospital Infection (2023) 141, 41-48



背景

院内感染症の原因となる肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)は、ますます多剤耐性化している。迅速かつ効果的なタイピングツールがモニタリングに必要である。

目的

肺炎桿菌株が関連するか否かを判定するためのスクリーニングツールとして、multi-locus variable number tandem repeat analysis(MLVA法)に基づいた簡便かつ迅速な(5 時間未満)Multiplex PCR 法を評価すること。

方法

関連のない肺炎桿菌分離株 72 株(市中保菌者株、肝膿瘍をきたす強毒性株、基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生株およびカルバペネマーゼ産生株を含む)において、Multiplex PCR 法の包括的な識別力を評価した。アウトブレイクが疑われる 1 件および再発性髄膜炎 1 例由来の、関連の疑いがある株も試験した。MLVA 法の結果を、全ゲノムシークエンシング(WGS)解析と multi-locus sequence typing(MLST)を用いて比較した。

結果

MLVA 法と MLST は同等の識別力を示し、それぞれが、関連のない 72 分離株において 54 のプロファイルを識別した(Hunter-Gaston 識別指標 0.989)。1 つのシークエンス型(ST)または ST complex に属する各分離株は、少数の例外を除き、それぞれ MLVA type であった。ST268 および ST1119 の 2 株は同一の MLVA プロファイルを有し、ST307、ST86、ST45、ST37 のうち関連のない 2 株は、それぞれ 2 つの異なる MLVA type を示した。さらに、肺炎桿菌による新生児敗血症にグループ分けされた 7 例の試験では、5 株で共通の発生源であるという疑いが強く示された一方、MLVA プロファイルが異なる 2 株は、このクラスターから除外された。

結論

MLVA 法は、基礎的な分子生物学的機器のみを必要とする疫学的調査において有用かつ迅速な信頼性の高いツールであり、アウトブレイクに関与していない散発性の分離株の同定が可能である。しかし、同一の MLVA type を有する株におけるWGS など高度識別技術を用いた分析は、依然として必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


MLVA 法は「反復配列多型解析」と呼ばれ、細菌のゲノムにある短い縦列の繰り返し構造(リピート)に着目し、リピート数から菌株の異同を決定する分子疫学的手法である。肺炎桿菌の耐性率の増加に伴い、菌株のタイピングは同一菌株による水平伝播経路を知ることで適切な対策が可能となり、感染拡大を抑えることできる。これまでパルスフィールド電気泳動法が標準的な分子疫学的手法であったが、時間と技術、再現性などの問題があった。全ゲノム解析は極めて正確であるが時間と費用の点で日常的な使用は難がある。一方 MLVA 法は PCR ベースで短時間(5 時間以内)かつ廉価(4 米ドル以下)で実施できる遺伝子タイピング方法であるが、同一パターンの場合には全ゲノム解析が必要な場合がある。近年、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)による遺伝子タイピングが開発され 3 時間程度で結果報告が可能であり、今後が期待される。

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