電子データマイニングおよびコアゲノム複数部位塩基配列タイピングによる伝播に関連する第 3 世代セファロスポリン耐性腸内細菌目細菌の分析★★
Analysis of transmission-related third-generation cephalosporin-resistant Enterobacterales by electronic data mining and core genome multi-locus sequence typing A. Weber*, L. Neffe, L.A.P. Diaz, N. Thoma, S.J.S. Aghdassi, L.A. Denkel, F. Maechler, M. Behnke, S. Hӓussler, P. Gastmeier, A. Kola, on behalf of the EMerGE-NeT Consortium *Charité – Universitӓtsmedizin Berlin, Germany Journal of Hospital Infection (2023) 140, 96-101
背景
第 3 世代セファロスポリン耐性腸内細菌目細菌の院内伝播を封じ込めるため、接触隔離予防策が推奨されている。
目的
第 3 世代セファロスポリン耐性大腸菌(Escherichia coli)および第 3 世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の院内伝播を定量化すること。
方法
アウトブレイク自動検出システムを用いて、2016 年、2018 年、2020 年の第 3 世代セファロスポリン耐性腸内細菌目細菌のクラスター(N ≧ 2)を同定した。クラスターは、微生物学的結果の表現型の一致および空間的・時間的関係によって定義した。コアゲノム複数部位塩基配列タイピング(cgMLST)を用いて、クラスター分離株が患者間で伝播したかどうかを確認した。
結果
計 4,343 の第 3 世代セファロスポリン耐性大腸菌分離株と 1,377 の肺炎桿菌分離株を分析した。第 3 世代セファロスポリン耐性大腸菌分離株のうち、アウトブレイク自動検出システムによって 304 の分離株がクラスター分離株として同定され、クラスターサイズの中央値は 2(範囲 2 ~ 5)であった。cgMLST によって、計 23(7.5%)の第 3 世代セファロスポリン耐性大腸菌クラスター分離株が伝播に関連しており、そのうち 20(87%)の分離株は集中治療患者において検出されたことが明らかになった。第 3 世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌分離株のうち、アウトブレイク自動検出システムによって 73 の分離株がクラスター分離株として同定され、クラスターサイズの中央値は 2(範囲 2 ~ 4)であった。cgMLST によって、35(48%)の第 3 世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌クラスター分離株が伝播に関連しており、そのうち 27(77%)の分離株は集中治療患者において検出されたことが明らかになった。
結論
第 3 世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌は、第 3 世代セファロスポリン耐性大腸菌よりも、cgMLST がアウトブレイク自動検出システムの結果を裏付ける頻度が高かった。したがって、第 3 世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌に関しては接触隔離予防策が集中治療室に適している可能性があるものの、大腸菌などの伝播性の低い腸内細菌目細菌に関しては、アウトブレイクなどのある特定の状況においてのみ適していると思われる。
監訳者コメント:
第 3 世代セファロスポリン耐性大腸菌および肺炎桿菌のアウトブレイク検出に、アウトブレイク自動検出システムと遺伝子解析を組み合わせたドイツからの報告。日本では第 3 世代セファロスポリン耐性大腸菌に比べ、第 3 世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌の検出頻度が少ないが、大腸菌に比べて、肺炎桿菌の感染力が強く今後問題となっていく可能性がある。考察では、第 3 世代セファロスポリン耐性腸内細菌目細菌に対して、一律に接触隔離予防策を行うのではなく、リスクに応じて予防策を実施するとしているが、第 3 世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌については接触隔離予防策が適切である可能性があるとも述べられている。
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