スイスのコンパニオンアニマルクリニック 4 施設において感染予防・制御実践を改善するための教育的介入
Educational intervention to improve infection prevention and control practices in four companion animal clinics in Switzerland K. Dassler*, K. Zurfluh, R. Stephan, B. Willi *University of Zurich, Switzerland Journal of Hospital Infection (2023) 139, 121-133
背景
感染予防・制御(IPC)実践にはコンパニオンアニマルクリニックによってばらつきがあり、これまでカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)のアウトブレイクが報告されている。
目的
コンパニオンアニマルクリニック 4 施設において、IPC 介入(IPC プロトコール、IPC に関する講義、手指衛生キャンペーンの導入)の効果を検討すること。
方法
IPC 実践、抗菌薬耐性微生物による環境および手指の汚染、ならびに手指衛生について、ベースライン、介入1 か月後および 5 か月後に評価を行った。
結果
IPC スコアの中央値(最大スコアに対する割合[%])は、57.8%(範囲 48.0 ~ 59.8%)から 1 か月後の追跡評価時には 82.9%(範囲 81.4 ~ 86.3%)に改善した。蛍光タグ付けにより評価した清掃頻度の中央値は、16.7%(範囲 8.9 ~ 18.9%)から 1 か月後の追跡評価時には 30.6%(範囲 27.8 ~ 52.2%)、5 か月後の追跡評価時には 32.8%(範囲 32.2 ~ 33.3%)に改善した。抗菌薬耐性微生物による汚染は、クリニック 3 施設でベースラインでは低く、介入後には検出不能であった。クリニック 1 施設では、介入前後に CPE を含む抗菌薬耐性微生物による広範な汚染が示された(抗菌薬耐性微生物陽性サンプル 7.5 ~ 16.0%、CPE 陽性サンプル 5.0 ~ 11.5%)。手指衛生遵守率の平均は、20.9%(95%信頼区間[CI]19.2 ~ 22.8%)から 1 か月後の追跡評価時には 42.5%(95%CI 40.4 ~ 44.7%)、5 か月後の追跡評価時には 38.7%(95%CI 35.7 ~ 41.7%)に改善した。手指衛生遵守率が最も低かったのは、ベースライン時の術前処置区域(11.8%、95%CI 9.3 ~ 14.8%)および介入後の集中治療室(28.8%、95%CI 23.3 ~ 35.1%)であった。手指衛生遵守率は、ベースラインでは獣医(21.5%、95%CI 19.0 ~ 24.3%)および看護師(20.2%、95%CI 17.9 ~ 22.7%)で同様であったが、1 か月後の追跡評価時には獣医(46.0%、95%CI 42.9 ~ 49.1%)の方が看護師(39.0%、95%CI 36.0 ~ 42.1%)より高かった。
結論
IPC 介入により、すべてのクリニックでIPC スコア、清掃頻度、および手指衛生遵守率が改善した。アウトブレイクの状況では、適合したアプローチが必要となろう。
監訳者コメント:
コンパニオンアニマル(伴侶動物)は人と密接な関係にあり、これらを介した薬剤耐性菌の伝播が危惧されている。獣医療機関は薬剤耐性菌のみだけでなく、数多くの人獣感染症のリスクに直面しており、こうした感染予防の実践が重要である。
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