COVID-19 患者において医療関連感染症を引き起こす多剤耐性菌の発生:後向き多施設研究

2023.07.22

The emergence of multi-drug-resistant bacteria causing healthcare-associated infections in COVID-19 patients: a retrospective multi-centre study

I. Gajic*, M. Jovicevic, V. Popadic, A. Trudic, J. Kabic, D. Kekic, A. Ilic, S. Klasnja, M. Hadnadjev, D.J. Popadic, A. Andrijevic, A. Prokic, R. Tomasevic, L. Ranin, Z. Todorovic, M. Zdravkovic, N. Opavski
*University of Belgrade, Serbia

Journal of Hospital Infection (2023) 137, 1-7


緒言

臨床検査で確認された重症急性呼吸器症候群コロナウイルス‐2(SARS-CoV-2)の入院患者において、細菌感染症の有病率、原因、抗菌薬耐性パターンを評価した。さらに、細菌感染症を有する COVID-19 患者の併存疾患、リスク因子、死亡率を調査した。

方法

本後向き観察研究では、2021 年 1 月 1 日から 2022 年 2 月 16 日までの期間に医療センター 3 施設に入院し、無作為に抽出された COVID-19 患者 7,249 例のカルテを評価した。そのうちCOVID-19 患者計 6,478 例が分析の適格基準を満たした。

結果

SARS-CoV-2 と細菌感染症を合併した患者の平均年齢は、68.6 ± 15.5 歳(範囲 24 歳 ~ 94 歳)であった。患者の過半数(68.7%)は 65 歳を超えていた。COVID-19 入院患者における細菌感染症の有病率は 12.9%で、その大部分は院内感染症(11.5%)であった。血流感染症(37.7%)および呼吸器感染症(25.6%)が、もっとも頻度の高い細菌感染症であった。肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)とアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)がそれぞれ、すべての細菌感染症の 25.2%、23.6%を引き起こした。腸内細菌目細菌(Enterobacterales)、A. baumannii、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のカルバペネム耐性は、それぞれ 71.3%、93.8%、69.1%であった。死亡例では、年齢 60 歳超および 3 種類以上の病原体に起因する感染症の頻度が、生存者と比較して有意に高かった(P < 0.05)。さらに挿管された患者の 95%が、人工呼吸器関連肺炎を発症した。SARS-CoV-2 と細菌感染症を合併した患者の院内全死亡率は 51.6%で、さらに侵襲的人工換気を必要とした患者では 91.7%が死亡した。

結論

本研究の結果より、COVID-19 の重大な合併症である医療関連細菌感染症と致死的転帰との特筆すべき関連性が明らかにされた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


COVID-19 の重大な合併症である続発する様々な医療関連細菌感染症について、多施設間共同で検証した論文である。血流感染症(37.7%)および呼吸器感染症(25.6%)が、もっとも頻度の高い医療関連細菌感染症で、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)とアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)が細菌感染症の 25.2%、23.6%を引き起こしていた。

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