軟性内視鏡の汚染除去のための低温大気圧プラズマの評価★

2023.06.02

Evaluation of cold atmospheric plasma for the decontamination of flexible endoscopes

R.C. Hervé*, M.G. Kong, S. Bhatt, H-L. Chen, E.E. Comoy, J-P. Deslys, T.J. Secker, C.W. Keevil
*University of Southampton, UK

Journal of Hospital Infection (2023) 136, 100-109


背景

標準プロトコールを遵守したにもかかわらず、生存微生物を含む残留物が再処理済みの軟性内視鏡の種々の表面に残存する可能性がある。プリオンは除去が難しいことで有名な感染性タンパク質である。

目的

有効性の指標として総タンパク量およびプリオンの残存感染力を測定し、低温大気圧プラズマによる軟性内視鏡の種々の表面の汚染除去の可能性を検証すること。

方法

試験用汚染物質またはプリオン感染組織を添加した新しいポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene;PTFE)内視鏡チャネルおよび金属の試験表面を、低温大気圧プラズマを生成する別々の試作品を用いて処理した。非常に感度の高い落射蛍光顕微鏡を用いて、残留物の有無について表面を試験した。ワイヤーインプラント動物モデルとより感度の高い細胞感染力アッセイを用いて、プリオンの残存感染力を決定した。

結果

汚染物質を除去した平らな試験表面に、低温大気圧プラズマジェットを 3 分以内で近距離から垂直に当てたが、ワイヤーインプラント動物アッセイ法による評価では、顕微鏡レベルの残留物が残り、プリオンの感染力は除去できなかった。長いチャネルの処理のために開発された低温大気圧プラズマの試作品の縦方向の気流は、単独で適用した場合、残留する汚染物質の遠位末端への移動と堆積を引き起こした。ガラス管内部のプラズマの観察によって、限られた範囲内での時間的・空間的な不均一性が示された。プリオン感染力細胞アッセイによると、標準的な酵素による手動での予洗い後、低温大気圧プラズマで活性化された気体流出物は、処理された内視鏡チャネルからのプリオンの伝播を防いだ。

結論

低温大気圧プラズマは、外科的表面の汚染除去の最終段階として有望な結果を示している。低温大気圧プラズマの送達を最適化することによって、低温大気圧プラズマの有効性がさらに高まり、軟性内視鏡のすべての管腔表面の再処理に安全で化学薬品を使用しない代替案を提示できる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


軟性内視鏡の内腔は使用直後に手動でブラッシング洗浄し、すべてのチャンネルをフラッシュ洗浄した後に自動洗浄機で高レベルの消毒が実施されるが、内腔内の蛋白などの汚れを完全に除去することは容易ではない。特にプリオンの除去は通常の高レベル消毒では不活化は困難であり、単回使用の内視鏡はまだ一般的に使用されていない状況を考慮すると、生物学的活性のある汚染物除去方法として低温大気圧プラズマによる処理法がひとつの選択肢として考えられるが、さらなる研究開発が必要である。

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