中所得国における腹部手術後の手術部位感染症による費用:Key resource use In Wound Infection(KIWI)試験

2023.06.02

The costs of surgical site infection after abdominal surgery in middle-income countries: Key resource use In Wound Infection (KIWI) study

M. Monahan*, J. Glasbey, T.E. Roberts, S. Jowett, T. Pinkney, A. Bhangu, D.G. Morton, A.R. de la Medina, D. Ghosh, A.O. Ademuyiwa, F. Ntirenganya, S. Tabiri, on behalf of the NIHR Global Research Health Unit on Global Surgery
*University of Birmingham, UK

Journal of Hospital Infection (2023) 136, 38-44


背景

腹部手術においてもっとも頻度の高い合併症は手術部位感染症(SSI)であり、患者および医療システムへの多額な費用が生じる。既報の SSI 研究における原価計算法の異質性は、多国間の比較を困難にしている。本研究の目的は、中所得国における SSI による費用を評価することである。

方法

SSI を低減するための介入を評価する無作為化対照試験(FALCON, ClinicalTrials.gov, NCT03700749NCT)の施設が、上位中所得の 2 か国(インド、メキシコ)、下位中所得の 2 か国(ガーナ、ナイジェリア)から標本抽出を行った。Key resource use In Wound Infection(KIWI)試験では、2020 年 4 月から 10 月に FALCON 試験に募集された、5 cm 超の切開(帝王切開を含む)による腹部手術を受けた連続する患者から、術後の資源使用および費用に関するデータを収集した。SSI 患者と非 SSI 患者に発生した全体的な費用を、術野の汚染(準清潔創 対 汚染‐不潔創)、国、およびタイミング(入院 対 外来)別に比較した。

結果

患者計 335 例を KIWI の対象とした。SSI の発生が、準清潔創の症例の 7%、汚染‐不潔創の症例の 27%で確認された。全体として、準清潔手術後の SSI は術後医療費の 75.3%の増加(412 ユーロ国際通貨)、汚染‐不潔手術後の SSI は術後医療費の 66.6%の増加と関連した(331 ユーロ)。インドで準清潔創に対する費用の増加が最大で(517 ユーロ)、汚染‐不潔創に対する費用の増加が最低であった(223 ユーロ)。全体の入院費は、準清潔手術後では総医療費の 96.4%、汚染‐不潔手術後では92.5%を占めた。

結論

さまざまな状況において、SSI は術後のかなりの追加費用と関連した。SSI を低減する医療技術への投資が、患者および資源の乏しい医療システムへの経済的負担を緩和する可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント


腹部手術における SSI による追加医療費を入院中および退院後に分けて評価した研究。研究手法は日本で SSI の経済的負担を評価する際にも応用できると思われる。

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