尿路病原性大腸菌(Escherichia coli)に対する殺生物薬とクオラムセンシング阻害薬による抗微生物活性と細胞毒性の相乗作用

2023.04.19

Antimicrobial and cytotoxic synergism of biocides and quorum-sensing inhibitors against uropathogenic Escherichia coli

K.L. Capper-Parkin*, T. Nichol, T.J. Smith, M.M. Lacey, S. Forbes
*Sheffield Hallam University, UK

Journal of Hospital Infection (2023) 134, 138-146


背景

尿路病原性大腸菌(Escherichia coli)は、カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)の主要原因であり、カテーテル表面に成熟した抵抗性バイオフィルムを形成することが多い。カテーテル用に単独の殺生物薬を含有する抗感染コーティング剤が開発されているが、殺生物薬耐性細菌集団の選択により、その抗微生物活性には限界が示されている。さらに殺生物剤は、バイオフィルムを根絶するために必要な濃度において細胞毒性を示すことが多く、その消毒効果には限界がある。クオラムセンシング阻害薬は、カテーテル表面のバイオフィルム形成を妨げる新規の抗感染アプローチを提供し、CAUTI 予防に有用である。

目的

殺菌濃度、静菌濃度、およびバイオフィルム除去濃度における殺生物薬とクオラムセンシング阻害薬による相乗効果について評価すること、ならびに膀胱平滑筋細胞系列において細胞毒性を評価すること。

方法

チェッカーボード法を用いて、試験に用いた併用薬剤の尿路病原性大腸菌に対する併用発育阻止濃度、殺菌濃度、およびバイオフィルム除去濃度、ならびに膀胱平滑筋細胞における相乗細胞毒性作用を求めた。

結果

ポリヘキサメチレンビグアナイド、塩化ベンザルコニウム、または硝酸銀の間で、クオラムセンシング阻害薬であるシンナムアルデヒドまたはフラノン C30 のいずれかとの併用において、尿路病原性大腸菌バイオフィルムに対する相乗的な抗微生物作用が認められた。しかしフラノン C30 には、静菌作用が得られる濃度未満であっても細胞毒性が示された。シンナムアルデヒドには、塩化ベンザルコニウム、ポリヘキサメチレンビグアナイド、または硝酸銀と併用した場合、用量依存性の細胞毒性プロファイルが認められた。ポリヘキサメチレンビグアナイドと硝酸銀はいずれも、50%最小発育阻止濃度(IC50)未満で静菌活性および殺菌活性の相乗作用を示した。トリクロサンは、2 つのクオラムセンシング阻害薬のいずれの併用においても、尿路病原性大腸菌と膀胱平滑筋細胞のいずれに対しても拮抗作用を示した。

結論

ポリヘキサメチレンビグアナイドと硝酸銀は、シンナムアルデヒドとの併用で、細胞毒性をもたらさない濃度において尿路病原性大腸菌に対して相乗的な抗微生物作用を示したことから、カテーテル用の抗感染コーティング剤となる可能性が示唆される。

サマリー原文(英語)はこちら

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特になし

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*Federal Institute for Materials Research and Testing, Germany
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 115-125

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