バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)獲得のリスク低減を図るための患者・職員隔離の有効性:日本における VRE アウトブレイク時の後向きコホート研究
Effectiveness of patient and staff cohorting to reduce the risk of vancomycin-resistant enterococcus (VRE) acquisition: a retrospective cohort study during a VRE outbreak in Japan K. Kakimoto*, S. Nishiki, Y. Kaga, T. Harada, R. Kawahara, H. Takahashi, E. Ueda, N. Koshimo, H. Ito, T. Matsui, K. Oishi, T. Yamagishi *National Institute of Infectious Diseases, Japan Journal of Hospital Infection (2023) 134, 35-42
背景
患者および職員の隔離は、多剤耐性菌に対するバンドルアプローチの一環であるが、その有効性は十分に解明されていない。本研究では、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(vancomycin-resistant Enterococcus faecium;VREfm)アウトブレイク時の病院において、隔離の有効性をより理解するために、接触の特性に基づき VREfm 獲得のリスクを比較した。
方法
VREfm を保有する既存患者および試験期間中に VREfm を獲得した患者を含む VREfm を保有する患者(感染者)との接触を曝露とした。接触の定義は、2018 年 1 月から 3 月の接触時間の長さ、一定の共有空間、および感染者をケアする看護師と同一看護師によるケアとした。月 1 回の便または直腸検体のスクリーニング培養により確定された VREfm 獲得をアウトカムとした。接触パターンに基づき発生率を算出し、発生率比を比較した。
結果
入院患者 272 例(4,038 患者・日)のうち 43 例が、同一または類似の pulsotype を示す VREfm を獲得した。易感染性の入院患者が感染者と同一病棟にいたが、異なる看護師によるケアを受けた場合の発生率は 1,000 患者・日あたり 8.45(基準)で、易感染性の入院患者が感染者と同一病棟にいて、同じ看護師によるケアを受けた場合は、1,000 患者・日あたり 16.96(発生率比 2.01、95%信頼区間[CI]0.62 ~ 10.28)、易感染性の入院患者が感染者と同室であった場合は、52.91(発生率比 6.26、95%CI 1.61 ~ 35.40)であった。
結論
感染者と病室が別で、同じ看護師によるケアを受けていない易感染性の入院患者と比較して、感染者と同一の病室にいる易感染性の入院患者では、VREfm 獲得のリスクが 6 倍高くなり、感染者と同じ看護師によるケアを受けた易感染性の入院患者では 2 倍になる可能性がある。
監訳者コメント:
日本では VRE が急増しており、その対策は喫緊の課題である。同室患者、あるいは同一チームでの VRE 水平伝播のリスクが高いというのは想像できるが、さらに掘り下げた具体的な伝播経路については引き続き検討が必要であろう。
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