多床病室におけるベッドサイドのワイプの影響:感染と生存を評価した前向きクロスオーバー試験★★
The impact of bedside wipes in multi-patient rooms: a prospective, crossover trial evaluating infections and survival M. Dadon*, K. Chedid, E.T. Martin, I. Shaul, O. Greiver, I. Katz, H. Saadon, M. Alfaro, L. Hod, A. Shorbaje, A. Braslavsky-Siag, S. Moscovici, K.S. Kaye, D. Marchaim *Tel Aviv University, Israel Journal of Hospital Infection (2023) 134, 50-56
背景
多床病室の高頻度接触面には多剤耐性病原体(MDRO)が蔓延している。
目的
使い捨ての清掃/消毒用ワイプを各病床の側に吊り下げたときの影響を定量化した。事前に規定した判定項目は、(1)病院感染(HAI)、(2)清掃頻度、(3)MDRO の病室汚染、(4)新たな MDRO 感染、(5)死亡であった。
方法
イスラエルの Shamir Medical Center でクラスターランダム化クロスオーバー試験を実施した(2016 年 10 月から 2018 年 1 月)。クラスターを、使い捨ての四級アンモニウムワイプ(クリネル)を用いて清掃を行う群または標準的方法(再利用可能な布およびバケツと漂白剤)で清掃を行う群にランダムに割り付けた。6 か月の介入期間を、ウォッシュアウト期間を置いて交互に実施した。5 つの高頻度接触面を蛍光マーカーによってモニタリングした。試験の転帰を、一般化推定方程式、ポアソン回帰、Cox 比例ハザードモデルを用いて各期間の間で比較した。
結果
全体で患者 7,725 例を組み入れ(47,670 人年)、3,793 例が介入清掃を行う病室、3,932 例が標準的方法を用いる病室の患者であった。介入期間に、HAI 率に有意差は認められなかった(発生率比 1.6、95%信頼区間[CI]0.7 ~ 3.5、P = 0.3)。しかし、介入を行った病室では、環境清掃の頻度が上昇し(オッズ比 3.73、95%CI 2.0 ~ 7.1、P < 0.0001)、MDRO の環境汚染率が非有意ではあったが低下し(オッズ比 0.7、95%CI 0.5 ~ 1.0、P = 0.06)、新規 MDRO 感染率が低下し(ハザード比 0.4、95%CI 0.2 ~ 1.0、P = 0.04)、院内死亡率が低下した(発生率比 0.8、95%CI 0.7 ~ 1.0、P = 0.03)。
結論
使い捨ての清掃/消毒用ワイプを各病床の側に吊り下げることにより、HAI 率には影響がなかったが、清掃の頻度が向上し、MDRO の環境汚染が減少し、新規 MDRO 感染率の低下と死亡率の低下がもたらされた。これは、多床病室における患者転帰を改善するために、実行可能な推奨される方法である。
監訳者コメント:
使い捨てのクリネルのワイプをベッドサイドに設置し、1 日 1 回看護助手が実施することで拭き掃除による環境消毒が確実に可能となり、環境汚染状況に改善が認められ、デバイス関連の感染率に変化がなかったものの、新規 MDRO 陽性者と死亡率の低下が有意に認められた。比較対照が「バケツと布と漂白剤」による環境消毒であり、わざわざベッドサイドにまでこれらを持ってくる手間がかかるのに対して、ベッドサイドにあるワイプは、気づいた時にすぐに使用できること、また使いやすいことがこの結果につながったのであろう。看護助手の手間を考えるとワイプの使用は費用対効果も良いと考えられる。
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