相部屋が大部分を占める病院において、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染または保菌している患者の個室隔離の中止が、医療関連 VRE 菌血症の発生率に及ぼす影響
Impact of discontinuing isolation in a private room for patients infected or colonized with vancomycin-resistant enterococci (VRE) on the incidence of healthcare-associated VRE bacteraemia in a hospital with a predominantly shared-room setting E. Chang*, D. Im, H.Y. Lee, M. Lee, C.M. Lee, C.K. Kang, W.B. Park, N.J. Kim, P.G. Choe, M. Oh *Seoul National University College of Medicine, Republic of Korea Journal of Hospital Infection (2023) 132, 1-7
背景
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の院内伝播予防のために、VRE 感染または保菌している患者を個室またはコホート隔離室に隔離することについては、議論の余地がある。
目的
相部屋が大部分を占める急性期ケア病院において、VRE 感染または保菌している患者に対する隔離政策緩和が医療関連 VRE 菌血症に及ぼす影響を評価すること。
方法
医療関連 VRE 菌血症の発生率を、個室隔離期間(2014 年 10 月から 2017 年 9 月)、コホート隔離期間(2017 年 10 月から 2020 年 6 月)、非隔離期間(2020 年 7 月から 2022年 6 月)において比較した。Poisson 回帰モデルを用いて、各期間の医療関連 VRE 菌血症の発生率のレベルの変化と傾向を分析するために分割時系列解析を実施した。
結果
相部屋に入院した VRE 感染または保菌している患者の割合は、個室隔離期間の 18.3%から非隔離期間には 82.6%まで増加した(P < 0.001)。医療関連 VRE 菌血症の発生率について、個室隔離期間とコホート隔離期間の間(相対リスク 1.01、95%信頼区間[CI]0.52 ~ 1.98、P = 0.977)またはコホート隔離期間と非隔離期間の間(相対リスク 0.99、95%CI 0.77 ~ 1.26、P = 0.903)で有意差は認められなかった。さらに、すべての期間の間で、医療関連 VRE 菌血症の発生率に有意な勾配の増加も認められなかった。
結論
相部屋が大部分を占める病院において、他の感染制御策が維持されている場合、隔離政策の緩和は医療関連 VRE 菌血症の増加につながらなかった。
監訳者コメント:
大部屋がベースの病院では VRE が出た時に個室隔離をしてもしなくても、VRE の菌血症発生率は変わらない、という論文であるが、VRE の一斉保菌検査などをしているわけではないので、VRE の保菌率などは見ていない。菌血症の発生率に差が出るほどの影響はない、ということかもしれないが、中長期的にトレンドを見ないと何ともいえないところもあるだろう。
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