急性期ケア病院の 2 カ所の病棟における SARS-CoV-2 デルタ変異株のアウトブレイク― バイタルデータ取得用カートの使用および最適とはいえない個人防護具脱衣と関連する単一曝露によるアウトブレイク
A two-ward acute care hospital outbreak of SARS-CoV-2 delta variant including a point-source outbreak associated with the use of a mobile vital signs cart and sub-optimal doffing of personal protective equipment H.M. O’Grady*, R. Harrison, K. Snedeker, L. Trufen, P. Yue, L. Wrd, A. Fifen, P. Jamieson, A. Weiss, J. Coulthard, T. Lynch, M.A. Croxen, V. Li, K. Pabbaraju, A. Wong, H.Y. Zhou, T.C. Dingle, K. Hellmer, B.M. Berenger, K. Fonseca, Y-C. Lin, D. Evans, J.M. Conly *Alberta Health Services, Canada Journal of Hospital Infection (2023) 131, 1-11
背景
SARS-CoV-2 デルタ変異株の出現は、伝播性の増強および重症度のより高い病態と関連した。急性期ケア病院におけるデルタ変異株による COVID-19 院内アウトブレイクの報告が記述されているが、制御策は多岐にわたる。
目的
2 カ所の病棟の COVID-19 デルタ変異株と関連するアウトブレイクにおいて、その発生源、リスク因子、制御策を明らかにするために疫学的調査を実施した。
方法
調査に含めたのは、疫学的分析、詳細な症例調査、患者および医療従事者の SARS-CoV-2 連続逆転写 PCR(RT-PCR)検査、ウイルス培養、環境スワブ採取、医療従事者に知らされていない個人防護具(PPE)の監視、換気評価、および全ゲノムシークエンシング(WGS)の使用などであった。
結果
2 カ所の病棟におけるこの関連するアウトブレイクにより、ワクチン接種率 83%にかかわらず、症例数は患者 17 例、医療従事者 12 名であった。この状況において、院内 COVID-19 感染症の重大なリスク因子として、PPE プロトコールに対する最適とはいえないアドヒアランスとコンプライアンス、最適とはいえない手指衛生、多病床の病室、潜在的な媒介物または医療従事者の手指を介した拡散によるバイタルデータ取得用カートの汚染が特定された。72 時間以内の突発的な発症が、Ward 2 の全患者の 79%で認められ、Ward 2 の全症例(患者および医療従事者)の 93%は、1 回目の培養期間に発生し、単一曝露アウトブレイクと一致した。RT-PCR アッセイでは、サイクル閾値(CT)が低値で、バイタルデータ取得用カートなどの環境スワブのウイルス量が多いことが示された。WGS の結果、試料間の SNP の違いは 3 以下であった。
結論
臨時措置も取らず、標準的 PPE 要件の変更もしない“基本に立ち返る”というアプローチによって、両病棟のアウトブレイクは 3 週間以内に急速に収束した。推奨される PPE の厳格なアドヒアランス、手指衛生、教育、検査や面接など医療従事者の協力、患者や職員の一時的な行動制限などの追加手段がすべて、アウトブレイクの迅速な収束に寄与したと考えられる。
監訳者コメント:
COVID-19 において接触感染は主要な感染経路ではないとされているが、時折接触感染が原因と考えられる報告が発表される。耐性菌対策などでも手指衛生や環境整備は基本中の基本である。「接触感染が主要な感染経路ではない = 手指衛生や環境整備が不要」と誤解されないよう正しい教育啓発の継続が重要である。
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