ウクライナにおける医療関連感染症の疫学と原因病原体の抗菌薬耐性メカニズム:多施設共同研究
Epidemiology of healthcare-associated infections and mechanisms of antimicrobial resistance of responsible pathogens in Ukraine: a multicentre study A. Salmanov*, D. Shchehlov, O. Svyrydiuk, I. Bortnik, M. Mamonova, S. Korniyenko, V. Rud, V. Artyomenko, M. Gudym, R. Maliarchuk, T. Bondar *Shupyk National Healthcare University of Ukraine, Ukraine Journal of Hospital Infection (2023) 131, 129-138
背景
多剤耐性病原体(MDRO)に起因する医療関連感染症(HAI)は、罹患率、死亡率およびコストの観点で、大きな影響がある。
目的
ウクライナにおける HAI の有病率と発生率を推定すること、ならびに原因病原体の抗菌薬耐性の表現型・遺伝子型の特性について述べること。
方法
2019 年 1 月から 2021 年 12 月に、ウクライナの地域病院 17 施設において前向き多施設共同サーベイランスを実施した。HAI の定義は、米国疾病対策センター(CDC)の全米医療安全ネットワーク(National Healthcare Safety Network)に従った。
結果
37,968 例の患者のうち、6,218 例(16.4%)の HAI が認められた。全 HAI 症例のうち、14.8%は退院後に検出された。最も報告頻度の高い HAI の種類は、肺炎(24.4%)、尿路感染症(19.8%)、手術部位感染症(15.3%)、血流感染症(11.2%)であった。全 HAI のうち、11.9%はアウトブレイクの一部として定義された。入院中の死亡は HAI 症例の 12.6%で報告された。全体で、患者由来の分離株の 85.1%が MDRO であると判明した。メチシリン耐性は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)分離株の 41.2%で認められ(MRSA)、バンコマイシン耐性は腸球菌(enterococci)の 11.8%で認められた。第 3 世代セファロスポリンに対する抗菌薬耐性はすべての腸内細菌目細菌(Enterobacterales)の 48.4%で検出された。カルバペネムに対する抗菌薬耐性はすべての非発酵グラム陰性菌(non-fermentative Gram-negative bacteria)の 71.3%で検出された。試験した全分離株のうち、25.1%が多剤耐性であると判明した。
結論
本研究によって HAI の高い有病率が認められた。MDRO に起因する HAI は、細菌種、抗菌薬のグループ、ウクライナの地理的地域によって大きく異なる。MDRO は HAI に関連する死亡の主因の 1 つであった。
監訳者コメント:
ウクライナの 3 次医療機関における HAI の状況がわかる。緑膿菌やアシネトバクターなどのブドウ糖非発酵グラム陰性菌のカルバペネム耐性がかなり進んでいる。ウクライナは東西南北に地域がわかれるが、耐性率も地域差があり、西部では比較的耐性率が低いようである。
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