滅菌後の整形外科手術器具の肉眼的汚染物質の細菌負荷率

2022.12.02

Prevalence of bacterial burden on macroscopic contaminants of orthopaedic surgical instruments following sterilization

I.J. Wellington*, T.J. Schneider, B.C. Hawthorne, M.B. McCarthy, J.W. Stelzer, J.P. Connors, C. Dorsey, V. Williams, A. Lindsay, O. Solovyova
*University of Connecticut, USA

Journal of Hospital Infection (2022) 130, 52-55


背景

前もって手術前の滅菌がされている整形外科手術器具は、皮質骨およびポリメチルメタクリレート骨セメントを含む微粒子による肉眼的汚染が手術前後または手術中に見られることが多く、そのような器具の無菌性が疑問視されている。

 

目的

整形外科手術器具類の肉眼的汚染物質は滅菌処理後に細菌負荷を維持するかどうか明らかにすること、また最も高頻度に汚染されている器具と最もよく見られる汚染物質を明らかにすること。

 

方法

2021 年 8 月から 2022 年 5 月までの 6 か月間(原文のまま記載、9 か月間の誤記載と思われる)にわたり、3 次紹介病院 1 施設において、整形外科手術器具トレイの肉眼的汚染物質を前向きに収集した。特定された場合、これらの検体を拭き取り、羊血液寒天培地に塗抹した。全検体を 37°C で 14 日間培養し、コロニー形成を目視検証した。細菌コロニー形成が特定された場合、サンプルを菌種同定のために送った。

 

結果

計 33 の汚染物質を検査し、1 つの汚染物質のみが細菌コロニー(コリネバクテリウム[Corynebacterium]属菌)を増殖させたことを確認した。肉眼的汚染が最も高頻度に確認された物品は手術用トレイ(N = 9)とキャニュレイテッドドリル(N = 7)であった。特定可能な汚染物質は、骨(N = 10)、ポリメチルメタクリレート骨セメント(N = 4)、毛髪(N = 4)であった。11 の肉眼的汚染物質は特定不可能であった。

 

結論

本研究によって、滅菌処理を受けた整形外科手術器具の肉眼的汚染物質の 97%は、細菌負荷を有さないことが確認された。手術中に発見される汚染物質は無菌である可能性が高く、患者に対する感染リスクを大幅に高めることはない。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

整形外科の手術はインプラントを挿入する手術も多く、肉眼的汚染が細菌汚染であった場合には術後の創部感染症を引き起こし、治療が極めて困難となるため、無菌であることの確認は重要である。しかしながら、培養の感度は 100%ではなく、すべての細菌が培養できるわけではないこと、また汚染物が有機物であった場合に、万一細菌汚染が術中に発生した場合の温床となるため、再生処理をおこなう器具は終了後に丁寧に汚れを取り除くことが必要であり、滅菌前の組み立て時の個々の器材の汚れについて丁寧な肉眼的確認も同様に必要である。

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