患者への緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)曝露を予防するためのシャワー部中空糸フィルター装置の不具合

2022.12.02

Failure of a hollow-fibre shower filter device to prevent exposure of patients to Pseudomonas aeruginosa

Ö. Yetiş*, S. Ali, K. Karia, P. Wilson
*University College London, UK

Journal of Hospital Infection (2022) 130, 1-6


背景

病院用水における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は侵襲感染症のリスクとなる。患者への微生物曝露を低減するために Point-of-use(POU)フィルターが使用され、中空糸フィルターがますます普及している。しかし、フィルターメカニズムの逆行性細菌定着が流水を汚染させる可能性がある。

 

目的

高リスク患者集団への緑膿菌曝露の予防のための POU フィルター(ポリスルホン;中空糸膜)装着シャワーヘッドの有効性を評価すること。

 

方法

中空糸フィルター装着および非装着でのシャワー蛇口 25 個(6 病棟のすべてのシャワーの約 21%)の緑膿菌汚染を計数するために、水を勢いよく流す前(蛇口を開き、最初の水 100 mL を採取)のサンプルを分析した。緑膿菌が存在するサブセットの蛇口の緑膿菌を計数した(サンプリング期間 2019 年 8 月 19 日から 2020 年 1 月 10 日)。

 

結果

25 個すべてのシャワーからの水は、シャワーヘッド部の緑膿菌が密に定着していた(> 300 コロニー形成単位[cfu]/100 mL。フィルター装着後のシャワー流水サンプルの 32%(25 個のうち 8 個)で緑膿菌が検出され、8 個のうち 4 個の(N = 4)の幾何平均は 4 × 106 cfu/100 mL(6.8 × 104 ~ 2 × 108)であった。フィルターは使用 15 日から 150 日(中央値 15 日)時点でサンプリングし、フィルターユニットの 26%(23 個中 6 個)で有効期限前にコロニー形成が認められた。

 

結論

POU フィルター装着シャワーヘッドユニットは、逆行性汚染(フィルターカートリッジ自体に逆行するシャワーヘッド外部汚染)または中空糸フィルターマトリックスの不具合が原因で、院内用水中の緑膿菌の易感染患者への曝露の予防に効果がない可能性がある。緑膿菌曝露から患者を防御するために、微生物学的モニタリングを繰り返し実施した上で中空糸フィルターの使用に頼るべきである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

フィルターは出てくる水が汚染している場合はその汚染を除去してくれる可能性はあるが、吐水側が汚染してしまってはフィルターの意味がない。むしろ異物となってバイオフィルムを形成するリスクもある。そもそもフィルターがあるから安全、安心、という思い込みは危険である。

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