直接観察による医師および看護師の手指衛生遵守:システマティックレビューおよびメタアナリシス
Hand hygiene compliance by direct observation in physicians and nurses: a systematic review and meta-analysis D. Bredin*, D. O’Doherty, A. Hannigan, L. Kingston *University of Limerick, Ireland Journal of Hospital Infection (2022) 130, 20-33
背景
手指衛生遵守の直接観察は、限界とバイアスの可能性にもかかわらず、ゴールドスタンダードとされている。既報では、医師における手指衛生遵守は看護師よりも不良であることが明らかにされ、覆面観察は、公然の観察よりも遵守率の推定が良好となる可能性が示唆されている。
目的
医師と看護師間の遵守の差を調査するとともに、公然の観察ではなく覆面観察とした場合、遵守率の推定が異なるかどうかを明らかにすること。
方法
PubMed、Embase、CENTRAL、CINAHL のデータベースのシステマティック検索を実施した。2010 年以降に英国で発表された、高所得国の病院環境における実験的研究または観察研究のうち、直接観察により医師と看護師両方の遵守率の推定が報告されている研究を含めた。検索により 4,814 報の研究を抽出し、そのうち 105 報を対象とした。
結果
重み付け統合遵守率は、看護師では 52%(95%信頼区間[CI]47 ~ 57%)、医師では 45%(95%CI 40 ~ 49%)であった。異質性は高度であった(I2 = 99%)。研究の大多数は、バイアスリスクが中等度または高度であった。バイアスリスクが低い研究のランダム効果メタアナリシスにより、遵守率は看護師の方が医師よりも、公然の観察(差 7%、差の 95% CI 0.8 ~ 13.5、P = 0.027)と覆面観察(差 7%、差の95%CI 3 ~ 11、P = 0.0002)とも高いことが示唆された。すべての分析において高度の異質性が認められた。
結論
手指衛生研究の方法論的な質において、遵守率の推定の広範なばらつきと差が確認された。メタ回帰を用いたさらなる研究により、異質性の原因が探求され、手指衛生研究の実施と報告が向上するであろう。
監訳者コメント:
手指衛生の遵守率向上は、その施設の感染対策の指標となる。しかし、実際には、測定法、研究手法に大きなばらつきがあるのでは、としている。出てきた数値は、何を表しているのか、の根幹への疑問を投げかける論文である。
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