隔離対処プログラムが多剤耐性微生物の保菌または感染症により隔離された患者に及ぼす影響：準実験研究★
Effect of an isolation-coping programme on patients isolated for colonization or infection with multi-drug-resistant organisms: a quasi-experimental study J.B. Lee*, J.S. Choi *Gachon University Gil Hospital, South Korea Journal of Hospital Infection (2022) 129, 31-37
背景
多剤耐性微生物の中でもバンコマイシン耐性腸球菌（VRE）およびカルバペネム耐性腸内細菌科細菌（CRE）の有病率の世界的な増加により、医療施設における接触予防策および隔離が必要とされるようになった。接触隔離は患者のメンタルヘルスに負の影響を及ぼすが、この問題に取り組んだ介入はほとんどない。
目的
VRE または CRE の保菌または感染を認める患者に対して感染制御看護師により実施される隔離対処プログラムを評価すること。
方法
多剤耐性微生物が原因の隔離による負の影響を低減するために隔離対処プログラムを開発し、同プログラムが多剤耐性微生物（VRE または CRE）により隔離された患者の不確実感、不安、抑うつ、および知識に及ぼす影響を、前後準実験デザインを用いて検証した。
結果
実験群（N ＝ 56）には隔離対処プログラムにより教育および精神的サポートを行い、対照群（N ＝ 55）には医療施設から口頭・書面での隔離ガイドラインのみを伝えた。対照群と比較して、実験群では不確実感（t ＝ －8.925）、不安（Z ＝ －6.131）、および抑うつ（Z ＝ －5.379）の減少、ならびに知識の向上（Z ＝ －8.372）が示された（すべてについて P ＜ 0.001）
結論
感染制御看護師により実施されるこの新しい隔離対処プログラムは、VRE または CRE が原因で隔離された患者において不確実感、不安、抑うつ、および知識を改善する効果的な介入であることが示された。
監訳者コメント：
現場の病棟看護師の耐性菌に関する知識や隔離に伴う業務量の増加を考慮すると、患者への隔離による精神的なダメージを対処するためには十分な知識をもつ感染制御看護師（ICN）によるストレス対処モデルに基づいた対応が良いと判断され実施された。隔離 1 日目に 20 分の教育（手指衛生、耐性菌、PPE、環境整備）と 20 分の精神的サポート（隔離に対する不安、恐怖、不満などの表出）、隔離 3 日目に、教育内容に関する理解度や質問に加えて、手指衛生前後の ATP による評価、睡眠状況や心理状況の確認を、隔離 7 日目に精神的状況についての傾聴と共感、そして支援を実施するという内容である。隔離による精神面への対応を日本において ICN の業務とするには、さらに ICN 数を増やすことと精神的支援のための教育も必要となる。
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