日本の大学病院における手術時の抗菌薬予防投与の適切性★

2022.11.12

Appropriateness of surgical antimicrobial prophylaxis in Japanese university hospitals

H. Morioka*, H. Ohge, M. Nagao, H. Kato, R. Kokado, K. Yamada, T. Yamada, N. Shimono, Y. Nukui, S. Yoshihara, I. Sakamaki, K. Nosaka, Y. Kubo, H. Kawamura, Y. Fujikura, T. Kitaura, M. Sunakawa, T. Yagi, on behalf of Research Group of Japan Infection Prevention and Control Conference for National and Public University Hospitals
*Nagoya University Hospital, Japan

Journal of Hospital Infection (2022) 129, 189-197


背景

手術時の抗菌薬予防投与は、主要な抗菌薬使用目的の一つである。

 

目的

日本の大学病院における手術時の抗菌薬予防投与のガイドラインの遵守を判定すること。

 

方法

本稿は総合病院 15 施設と歯科大学病院 1 施設を含む後向きコホート研究である。指定された 18 種類の手術において各 3 件までを、手術時の抗菌薬予防投与に関する日本のガイドライン(抗菌薬選択、投与のタイミング、再投与の間隔、手術時の抗菌薬予防投与の期間)の遵守について評価した。すべての項目が適切であった場合、手術は「適切」であると定義した。

 

結果

計 688 件の手術(指定手術あたり 22 ~ 45 件)を対象とした。全体の適切性は 46.8%(688 件中 322 件)で、各手術の適切性は 8.0%(25 件中 2 件、植込み型心臓電気デバイスの植込み)から 92.1%(38 件中 35 件、幽門側胃切除術)の範囲であった。各項目の適切性は次の通りで、術前/術中の選択 78.5%(688 件中 540 件)、投与のタイミング 96.0%(656 件中 630 件)、再投与の間隔 91.6%(656 件中 601 件)、術後の選択 78.9%(688 件中 543 件)、手術時の抗菌薬予防投与の期間 61.4%(688 件中 423 件)であった。各病院の全体的な適切性は、17.6%(51 件中 9 件)から 73.3%(45 件中 33 件)の範囲であった。不適切の理由の多くは、ガイドラインと比較して、投与期間が長いこと(38.5%[688 件中 265 件])、および最適な抗菌スペクトル以外の抗菌薬を術前/術中、術後に選択したこと(それぞれ 19.0%[688 件中 131 件]、16.9%[688 件中 116 件]であった。

 

結論

ガイドラインの遵守率には、手術間および病院間で大きな差があった。不適切な手術、適切性に関連する因子、および手術部位感染症の発生率を特定するために、日本の病院での手術時の抗菌薬予防投与に関して大規模な多施設共同サーベイランスが必要である。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

日本の大学病院における手術時抗菌薬の適切性が 46.8%と 50%を切っていることは大きな問題である。そもそもガイドラインの遵守率、というが実際にはまず入り口となるガイドラインの周知も確実に行われているかどうかも疑問である。現状を評価する取り組みとともに、現状を改善するための実践的な取り組みが必要とされている。

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