ペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬と抗菌薬適正使用支援による病院環境清掃が、院内発症クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症の減少に及ぼす影響
Impact of hospital environmental cleaning with a potassium peroxymonosulphate-based environmental disinfectant and antimicrobial stewardship on the reduction of hospital-onset Clostridioides difficile infections T. Umemura*, Y. Mutoh, M. Maeda, M. Hagihara, A. Ohta, T. Mizuno, H. Kato, M. Sukawa, T. Yamada, Y. Ikeda, H. Mikamo, T. Ichihara *Tosei General Hospital, Japan Journal of Hospital Infection (2022) 129, 181-188
背景
1%ペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬は、塩化ナトリウムと結合すると次亜塩素酸ナトリウムが生じて、消毒薬として機能する。しかし、ペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬による院内清掃が、院内発症のクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)に及ぼす影響はほとんど知られていない。
目的
院内発症 CDI を低減させるために、抗菌薬適正使用支援およびペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬による病棟清掃を推進した。本研究は、その影響を評価することを目的とした。
方法
広域スペクトル抗菌薬のフィードバックによる処方後調査およびペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬を用いた病棟清掃の推進に着手した。2014 年 7 月から 2018 年 3 月までの期間を、推進前(2014 年 7 月から 2015 年 6 月)と推進後(2015 年 7 月から 2018 年 3 月)に分けて、院内発症 CDI 発生率、ペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬の消費量、広域スペクトル抗菌薬の治療日数(DOT)について調査した。
結果
分割時系列解析では、介入後に院内発症 CDI の急激な有意の変化が認められたが(P = 0.03)、この期間を通して減少傾向はみられなかった(P = 0.19)。ペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬の消費傾向は、この期間に有意に変化した(P = 0.02)。カルバペネム系薬の DOT は介入開始後すぐに減少した(P < 0.01)。Poisson 回帰分析では、ペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬の消費量およびカルバペネム系薬の DOT が、院内発症 CDI に影響を及ぼす独立因子であることが示された(それぞれP = 0.039、P = 0.016)。
結論
われわれは、カルバペネム系薬の DOT およびペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬の使用が、院内発症 CDI 発生率と関連することと、両介入とも院内発症 CDI 発生率を低減させることを明らかにした。本稿は、ペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬による病棟清掃が院内発症 CDI 低減に及ぼす影響に関する第一報である。
監訳者コメント:
日本の研究論文である。ペルオキシ一硫酸カリウムベースの環境消毒薬の CDI 発生率の抑制、カルバペネム系薬の DOT の CDI 発生率の抑制が、それぞれ有効な因子であることが明らかにされた。
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