ドイツにおける病院感染 SARS-CoV-2 感染症の負担:異なる変異株の発生率と転帰★

2022.11.12

Burden of hospital-acquired SARS-CoV-2 infections in Germany: occurrence and outcomes of different variants

M. Bonsignore*, S. Hohenstein, C. Kodde, J. Leiner, K. Schwegmann, A. Bollmann, R. Möller, R. Kuhlen, I. Nachtigall
*Helios Klinikum Duisburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2022) 129, 82-88


背景

COVID-19パンデミック下では、病院感染の回避が極めて重要である。ドイツにおいて、病院感染 SARS-CoV-2 変異株がどの程度感染症の原因を占めているかについては、ほとんど知られていない。

 

目的

異なる SARS-CoV- 2 変異株に関して、病院感染症の発生率と転帰について分析すること。

 

方法

2020 年 3 月 1 日から 2022 年 5 月 17 日までに Helios Group に所属する病院 79 施設に入院した SARS-CoV-2 感染症患者を組み入れた。患者の特性および転帰に関する情報を、請求データから抽出した。Robert Koch Institute の基準に従って、入院後 6日を越えて検査陽性となった場合で、別の感染源を示唆する情報がないものを病院感染症に分類した。

 

結果

合計で SARS-CoV-2 患者 62,875 例を解析し、うち 10.6%は病院感染症であった。病院感染症は、野生型流行時における SARS-CoV-2 入院患者の 14.7%を占め、アルファ株流行時には 3.5%(オッズ比[OR]0.21、95%信頼区間[CI]0.19 ~ 0.24)、デルタ株流行時には 8.8%(OR 2.70、95%CI 2.35 ~ 3.09)、そしてオミクロン株流行時には 10.1%(OR 1.10、95%CI 1.03 ~ 1.19)であった。年齢と併存症を補正すると、病院感染症における死亡のオッズは市中感染症より低かった(OR 0.802、95%CI 0.740 ~ 0.866)。野生型流行時と比較して、オミクロン株の病院感染症は ICU 入室(OR 0.78、95%CI 0.69 ~ 0.88)、人工呼吸器(OR 0.47、95%CI 0.39 ~ 0.56)および死亡(OR 0.33、95%CI 0.28 ~ 0.40)のオッズが低かった。

 

結論

病院感染SARS-CoV-2 感染症はパンデミックの全期間を通じて発生しており、極めて脆弱な患者に罹患がみられた。新規の変異株ほど感染性が高かったが、病院感染症の割合は低くなり、このことは感染予防および/または免疫の効果が改善されたことを示している。さらに、オミクロン株流行時には転帰の改善を伴ったが、病院感染 SARS-CoV-2 感染症の負担は依然として高かった。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

ドイツでの病院感染 SARS-CoV-2 感染を野生株流行時と各変異株流行時で解析した研究。感染対策の向上や、ワクチンや自然感染などの免疫の効果によって、野生株流行時よりも変異株流行時での病院感染が減っているが、アルファ株、デルタ株、オミクロン株と新規の変異株が流行するにつれて、病院感染も増えている。オミクロン株で重症化のリスクが下がっているとはいえ、病院感染のリスクが増大しているのは日本と同様のようである。

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