3 次病院の血液内科病棟におけるヒトパラインフルエンザウイルス 3 型アウトブレイクの制御:スクリーニング戦略と臨床症状に関連した分子診断の重要性
Controlling a human parainfluenza virus-3 outbreak in a haematology ward in a tertiary hospital: the importance of screening strategy and molecular diagnostics in relation to clinical symptoms Z. Iglόi*, I.H.M. van Loo, A.M.P. Demandt, K. Franssen, M. Jonges, M. van Gelder, S. Erkens-Hulshof, L.B. van Alphen *Maastricht University Medical Centre (MUMC+), The Netherlands Journal of Hospital Infection (2022) 126, 56-63
背景
2016 年夏の、マーストリヒト大学医療センター(Maastricht University Medical Centre)の血液腫瘍病棟におけるヒトパラインフルエンザウイルス 3(HPIV-3)のアウトブレイク。
目的
オランダの成人血液腫瘍病棟 1 棟において報告された最も大規模な HPIV-3 アウトブレイクを制御するための、感染制御策および分子疫学調査の実行による効果的な戦略について述べること。
方法
臨床データ、患者データ、診断データを前向きおよび後向きの両方で収集した。HPIV-3のリアルタイム PCR(HPIV-3 RT-PCR)は、中咽頭のすすぎ液サンプルを用いて検証した。HPIV-3 の無症候性感染または排出期間延長を特定し、集団隔離を可能にするため、全新規患者および入院患者のスクリーニングを実行した。
結果
HPIV-3 のアウトブレイクは 2016 年 7 月 9 日から 9 月 28 日の間に発生し、53 例の患者が罹患した。中咽頭のすすぎ液サンプルの HPIV-3 RT-PCR は、咽頭スワブと比較して、最高で 10 倍高い感度を示した。モニタリングによって、最初の PCR 陽性では、患者 20 例(38%)が無症候性であり(そのうち 11 例は無症候性のまま)、平均排出期間は 14 日(範囲 1 ~ 58 日)であったことが示された。無症候性患者はウイルス量が少なく、ウイルス排出期間が短く(≦14日)、大部分が免疫能正常の腫瘍患者であった。本アウトブレイクは、無症候性患者のスクリーニングの実行 5 週間後に制御された。
結論
高感度なスクリーニング法の実行によって、症候性患者とウイルス量が少ない無症候性患者の両方が特定され、早期の集団隔離が可能となった。このことは様々な免疫状態の患者を併せ持つ病棟において特に重要である。なぜなら、免疫能低下患者と免疫能正常患者の両方が、排出期間延長または無症候性の疾患経過のいずれかを介して、HPIV-3 ウイルスを拡散する可能性があるためである。
監訳者コメント:
ヒトパラインフルエンザウイルスによるアウトブレイクは今までも度々報告されている。新型コロナウイルス感染症でも強調されている、(1)無症状病原体保有者が存在する、(2)免疫抑制患者ではウイルス排泄が遷延する、といった特徴を有する。医療現場ではコロナか、コロナでないか、だけでなく、コロナでない場合に、では何か、といったところまで掘り下げて評価できる姿勢と体制が必要である。
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