手術室での無菌保管のためのスタッカークレーンの利用:環境微生物学的な初期認定

2022.07.25

Using a stacker crane for sterile storage in the operating theatre: initial environmental microbiological qualification

H. Faury*, D. Ducellier, F. Cizeau, F. Boquel, C. Delaye, M. Oudjhani, L. Monpierre, C. Lafont, J.-W. Decousser
*University Hospital Henri Mondor, France

Journal of Hospital Infection (2022) 125, 48-54




背景

滅菌手術器具の適切な保管によって、手術室内の汚染と微生物汚染物質の導入を防げるはずである。機能的および経済的目的のため、スタッカークレーンは従来の無菌保管室に取って代わる可能性がある。スタッカークレーンは、自動的に保管し定めた場所から荷物を回収するために用いられる、大型、多段式のコンピューター支援システムである。しかし、それらの微生物学的性能は評価されていない。

 

目的

手術室 1 室を含む新病棟の開業の一環として、新しいスタッカークレーンを認定し、その微生物学的制御性能を従来の無菌保管室と比較した。

 

方法

2020 年 12 月から 2021 年 3 月まで、590 の環境検体(空気 N = 56、表面 N = 534)を採取し、フランス規格協会基準 NF S90-351 に従って解釈した。

 

結果

徹底的な表面消毒は、スタッカークレーン内の微生物汚染を制御するのに十分ではなかった。したがって、スタッカークレーンの積極的な空中化学的汚染除去の後に、初期認定試験を実施した。HEPA フィルタろ過空気システムがないにもかかわらず、全体の非適合率はスタッカークレーンのほうが従来の無菌保管室よりも低かった(空気[8.3%対 21.4%、P = 0.33]、表面[9.7%対 41.7%、P < 0.001])。荷積み区域前の空気制御バリアは、細菌汚染を防ぐのに十分であるように思われた。真菌の存在は注意深くモニタリングしなければならない。

 

結論

本研究は、容認できる環境条件のもと、空間の節約、滅菌手術器具の保管および安定供給維持の改善におけるスタッカークレーンの寄与を裏付ける最初の研究である。スタッカークレーン内の長期的な微生物学的汚染を評価するためには、さらなる研究が必要である。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

 手術室の衛生材料の保管や運搬にスタッカークレーンを用いた場合の汚染について調べた論文。スタッカークレーンといってもすぐにイメージが湧かないかもしれないが、立体式の駐車場のようなものをイメージすると良いだろうか。構造が複雑なので一旦汚染すると内部の清掃や消毒が難しそうだが、正しく使えば汚染を軽減することができるのかもしれない。今後自動化・ロボット化が進む中で、感染管理の視点も重要である。

 

同カテゴリの記事

2006.11.30

Increased mortality among elderly patients with meticillin-resistant Staphylococcus aureus bacteraemia

2009.10.30

Microbiological safety of food in hospitals and other healthcare settings

2021.08.31
Investigation of two cases of Mycobacterium chelonae infection in haemato-oncology patients using whole-genome sequencing and a potential link to the hospital water supply

T. Inkster*, C. Peters, A.L. Seagar, M.T.G. Holden, I.F. Laurenson
*Queen Elizabeth University Hospital, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 114, 111-116


2021.02.28

Electrostatic wipes as simple and reliable methods for influenza virus airborne detection

S. Marty-Quinternet*, L. Puget, A. Debernardi, R. Aubry, N. Magy-Bertrand, J.L. Prétet, C. Chirouze, K. Bouiller, Q. Lepiller
*Laboratoire de Virologie, France

Journal of Hospital Infection (2021) 108, 15-18

2021.05.30

Comparison of the in-vitro efficacy of different mouthwash solutions targeting SARS-CoV-2 based on the European Standard EN 14476

 

K. Steinhauer*, T.L. Meister, D. Todt, A. Krawczyk, L. Paßvogel, B. Becker, D. Paulmann, B. Bischoff, S. Pfaender, F.H.H. Brill, E. Steinmann

*Schülke & Mayr GmbH, Germany

 

Journal of Hospital Infection (2021) 111, 180-183

 

 

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ