COVID-19 流行の第一波時と第二波時の間で集中治療室における広域抗菌薬の使用低減は、死亡率に悪影響を及ぼさなかった
Reducing broad-spectrum antibiotic use in intensive care unit between first and second waves of COVID-19 did not adversely affect mortality X.H.S. Chan*, C.J. O’Connor, E. Martyn, A.J. Clegg, B.J.K. Choy, A.L. Soares, R. Shulman, N.R.H. Stone, S. De, J. Bitmead, L. Hail, D. Brealey, N. Arulkumaran, M. Singer, A.P.R. Wilson *University College London NHS Foundation Trust, UK Journal of Hospital Infection (2022) 124, 37-46
背景
COVID-19 パンデミックにおいて、診断不確定を理由とした広域抗菌薬の使用が、特に救急医療において増加した。多診療科間のコミュニケーションがより困難となり、抗菌薬適正使用の実践が弱体化した。
目的
パンデミック第一波時と第二波時の間における、細菌による共感染症/二次感染症、救急医療での COVID-19 患者に対する抗菌薬使用、ならびに死亡率における変化を明らかにすること。
方法
単一教育病院の集中治療室における、パンデミック最初の二波について細菌による共感染症/二次感染症およびそれらに対する治療を比較する前向き監査。COVID-19 と診断された患者において人口統計学的因子、毎日の抗菌薬使用、臨床転帰、および培養結果のデータを、11 か月にわたり収集した。
結果
2020 年 3 月 9 日から 2020 年 9 月 2 日(第一波時)までに患者 156 例が、また 2020 年 9 月 3 日から 2021 年 2 月 1 日(第二波時)までに患者 235 例が COVID-19 感染症で集中治療室に入室した。二つの感染の波の間で、死亡率または血液培養陽性率に有意差はなかった。抗菌薬療法を受けた患者の割合(93.0% 対 81.7%、P < 0.01)およびメロペネム投与期間(中央値[四分位範囲]5[2 ~ 7]対 3[2 ~ 5]日間、P = 0.01)は、第二波のほうが少なかった。しかし、呼吸器培養で緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が分離された患者数(156例中 4 例 対 235 例中 21 例、P < 0.01)および呼吸器が原因の菌血症(156 例中 3 例 対 235 例中 20 例、P < 0.01)には、感染症アウトブレイクと関連して第二波時に増加がみられた。二つの感染の波の間で、他の病原体の分離については有意差は認められなかった。
結論
COVID-19 アウトブレイクの第二波時における広域抗菌薬使用の減少により、第一波時と比較して、死亡率に有意な変化は認められなかった。
監訳者コメント:
COVID-19 の増加に伴い、適切な診断過程を(問診、身体診察、検体採取など)をスキップする傾向にあり、と同時に抗菌薬は広域スペクトルの方向に変わりがちである。さらに広域抗菌薬使用増加による菌交代にともなう耐性菌出現を危惧することになるが、本論文ではカルバペネム系抗菌薬の使用率も減り、また ICU での死亡率に差が見られなかったことは幸運であった。感染症診療の基本に戻ることが、COVID-19 のパンデミック中においても重要である。
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