医療関連 COVID-19 アウトブレイク:全国集団ベースコホート研究

2022.06.16

Healthcare-associated COVID-19 outbreaks: a nationwide population-based cohort study

H-H. Wu*, C-H. Su, L-J. Chien, S-H. Tseng, S-C. Chang
*Taiwan Centers for Disease Control, Taiwan

Journal of Hospital Infection (2022) 124, 29-36



背景

医療関連新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、患者、その関係者および医療従事者に対して大きな影響を及ぼす。医療環境における感染伝播の制御は、COVID-19 による死亡を減らすためにきわめて重要である。

 

目的

医療関連 COVID-19 アウトブレイクおよびアウトブレイク関連症例について、疫学および特性を記述すること。

 

方法

2020 年 1 月 15 日から 2021 年 7 月 31 日までに台湾で発生した医療関連アウトブレイクのそれぞれに関する調査データを、後向きに分析した。アウトブレイク関連の確定症例を、医療従事者症例、患者関係者症例、および患者症例というカテゴリーに分類し、確定症例の特性をこれらのカテゴリー間で比較した。

 

結果

合計で、医療関連 COVID-19 アウトブレイク 54 件と、これに含まれる確定症例 512 例が報告された。アウトブレイク 1 件当たりの感染症例数中央値は 6 例(四分位範囲[IQR]2 ~ 12)、アウトブレイクの持続期間中央値は 12 日(IQR 4.3 ~ 17.0)であった。確定症例全例のうち、部分的および完全にワクチン接種を受けていたのは、それぞれわずか 5.7%および 0.2%であった。ほとんどのアウトブレイク(90%、54 件中 48 件)が、2021 年の 5 月および 6 月に発生していた。医療従事者症例、関係者症例および患者症例が全例に占める割合は、それぞれ 19.5%、41.2%および 39.3%であった。患者症例は年齢(年齢中央値 72 歳、IQR 61 ~ 83)および 30 日全死因死亡率(37.4%)が、医療従事者症例(年齢中央値 41 歳、IQR 28 ~ 58.0%[原文のまま記載28 ~ 58の誤記載と思われる])および関係者症例(年齢中央値 52 歳、IQR 42 ~ 62.1%[原文のまま記載42 ~ 62の誤記載と思われる])より有意に高かった。

 

結論

医療関連 COVID-19 アウトブレイクは、患者にとって決定的な影響を及ぼす。しかしながら、本研究で検討した医療関連アウトブレイクにおける症例の 3 分の 2 は、医療従事者および患者関係者であった。医療環境において COVID-19 伝播を効果的に低減するためには、複合的な感染予防・制御策を実施すべきであり、またこれら 3 つの集団に合わせて調節すべきである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

本文中に、台湾の病院ではほぼすべての患者に付き添い(コンパニオン、患者関係者)が付くと記載があった。入院患者が COVID-19 に罹患した際の全死因死亡率は 37.4%と高く、またアウトブレイクには患者だけでなく医療従事者や患者関係者の関与が大きいことが示された。医療関連 COVID-19 アウトブレイクの制御には、患者だけでなく、医療従事者や患者関係者も含めた全体的な対策が重要である。

 

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