5%ポビドンヨードアルコール溶液の消毒活性に関する 4 種類の塗布方法を用いた評価:無作為化非盲検研究★

2022.05.16

Evaluation of the antiseptic activity of 5% alcoholic povidone-iodine solution using four different modes of application: a randomized open-label study

S.J. Monstrey*, D. Lepelletier, A. Simon, G. Touati, S. Vogt, F. Favalli
*University of Ghent, Belgium

Journal of Hospital Infection (2022) 123, 67-73


 

背景

何らかの侵襲的手技、例えば注射、外科的切開または血管内カテーテル挿入などを行う前に、感染症を予防するためにアルコール含有消毒薬(例、ポビドンヨード[PVP-I]アルコール)が広く用いられている。

 

目的

本無作為化非盲検研究では、5% PVP-I アルコール溶液について、塗布方法(塗布技術と塗布量の両者を含む)が消毒活性に及ぼす影響について検討した。

 

方法

PVP-I アルコールを、健康な成人の背中に以下の 4 種類の方法で塗布した:(A)同心円法、3 mL、(B)同心円法、10 mL、(C)往復摩擦法、3 mL;(D)往復摩擦法、10 mL。主要エンドポイントはPVP-I アルコールの消毒活性とし、すべての好気性菌および通性嫌気性菌の log10/cm2 コロニー形成単位(cfu)数におけるベースラインからの変化量により評価した。安全性のモニタリングを行った。

 

結果

健康参加者計 113 例にスクリーニングを行い、32 例を無作為化した。PVP-I アルコールは、すべての塗布法において有意な消毒活性を示し(それぞれP < 0.001)、全体的に平均 cfu 数がベースラインから 3 log10/cm2 を超えて減少した(P < 0.001)。往復摩擦法(C 法および D 法)では同心円法(A 法および B 法)と比べて、有意に高い消毒活性が認められた。共変量を補正した log10/cm2 cfu 数の変化は 0.22 であり、90%信頼区間は 0.07 ~ 0.37(P = 0.017)であった。安全性に関する問題は認められなかった。

 

結論

PVP-I アルコールは、すべての塗布方法において高い消毒活性を示した。往復摩擦法では同心円法と比較してより高い有効性が達成され、塗布技術が消毒活性に影響を及ぼす可能性が示された。これらの結果から、消毒物質の有効性を比較する場合(例、PVP-I アルコールとクロルヘキシジンアルコール)、同等の塗布方法を用いるべきである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

これまで、クロルヘキシジンとポビドンヨードにおける術後創部感染や血管留置カテーテル挿入時の消毒後の感染率の比較において、①クロルヘキシジンはアルコール含有に対して、アルコールを含まないポビドンヨード液での比較、②塗布方法が異なる比較(クロルヘキシジンは往復摩擦法、ポビドンヨードは同心円法)、で実施されてきた歴史的な経過がある。本論文では同一のポビドンヨードアルコールの消毒薬を使って、塗布方法を変えて、その差を比較検証したものである。すなわち、往復摩擦法が同心円法よりも統計学的有意にコロニー数減少効果があるというものである。しかしながら、統計学的有意差はあるものの、いずれの 4 方法において対象とのコロニー数の対数減少の程度が3.1 logから3.5 logと 4 種類の方法において大差はない。また塗布方法が、同心円法は中心から順次拡げてゆく手技であるのに対して、往復摩擦法は細かな往復塗布を縦と横の 2 回実施するため、塗布するときの皮膚への圧の差が摩擦力の差にもつながり、結果に影響する可能性もある。

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