2021 年 Lowbury Lecture:抗菌薬耐性における予期せぬ出来事

2022.05.16

Lowbury Lecture 2021: tales of the unexpected in antibiotic resistance

M. Bonten*
Utrecht University, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2022) 123, 139-142


新規抗菌薬は 1990 年代以降ほとんど開発されていない。この期間に第一選択抗菌薬、第二選択抗菌薬にすでに感受性を示さない細菌の出現や蔓延が加速した。実際に、一部の細菌感染症は既存の抗菌薬で治療が不可能になっていた。抗菌薬耐性の制御には多くの要素が関わっており、抗菌薬使用の制限および有効な感染制御対策なども含まれる。このレクチャーは、オランダを基準に抗菌薬耐性を 3 つの観点から検討し、抗菌薬耐性疫学の複雑さについて説明する。当初、選択的消化管除菌は抗菌薬耐性の懸念からオランダでは適用されなかった。しかし、3 件の試験において、セファロスポリン系薬の 4 日間全身投与など選択的消化管除菌レジメンは、良好な臨床転帰をもたらし、抗菌薬耐性菌に影響を及ぼさないことが示された。抗菌薬耐性菌による感染症が人の健康に及ぼす影響に関して、多くの予測がなされている。だが、多剤耐性菌による感染症のリスク因子も、不良な臨床転帰のリスク因子であるため、状況は複雑である。オランダの病院 8 施設における研究では、抗菌薬耐性に起因する死亡率が 0 に近いと推定された。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の耐性出現についての懸念は、手術部位感染症予防のためのムピロシンの普遍的使用を制限している。しかし、そのリスクは誇張されており、オランダの多くの病院では、心胸郭手術または整形外科手術を受ける患者においてムピロシンやクロルヘキシジンによる普遍的除菌が今や標準治療となっている。予防的抗菌薬は患者転帰を改善する可能性があり、耐性を助長するリスクは許容可能である。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

オランダは欧州でも特徴的な耐性菌対策をいくつも行っている。その典型が Search and Destory である。MRSA 保菌のリスクの高い患者にはスクリーニング検査を行い、陰性判定がでるまでは個室隔離を必要とする。ムピロシンやクロルヘキシジンによる普遍的除菌とはいっても、手術侵襲時などに一時的に保菌量を減少させて感染症発症のリスクを軽減するためだと考えるべきであろう。

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