緊急入院のトリアージにおける Abbott ID NOW SARS-CoV-2 迅速検査の診断精度★

2022.05.16

Diagnostic accuracy of the Abbott ID NOW SARS-CoV-2 rapid test for the triage of acute medical admissions

J.R. Barnacle*, H. Houston, I. Baltas. J. Takata, K. Kavallieros, N. Vaughan, A.K. Amin, S.A. Aali, K. Moore, P. Milner, A. Gupta Wright, L. John
*London North West University Healthcare NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2022) 123, 92-99


 

背景

救急部門において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクを有する患者を隔離するという決定は、迅速かつ正確に行う必要があり、それによって早期治療を行い、患者フローを維持するとともに、院内伝播を最小限に抑えるようにしなければならない。そのためには逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査は時間がかかりすぎ、トリアージを迅速に行うためにベッドサイド検査の使用が増加している。ID NOW 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)検査は、RNA 依存性 RNA ポリメラーゼ遺伝子を標的とする等温核酸増幅ベッドサイド検査である。

 

目的

ID NOW について、大規模急性期病院 1 施設において救急部門からの入院を決定するための COVID-19 トリアージ用ツールとしての診断性能を評価すること。

 

方法

2021 年 3 月 31 日から 7 月 31 日までについて、ID NOW および RT-PCR による妥当な結果に基づく救急部からのすべての成人の緊急入院を対象とした。ID NOW の診断精度(感度、特異度、陽性的中率、および陰性的中率)を、標準検査値との比較で算出した。合致しない結果については、サイクル閾値と臨床データを用いてさらに検討した。

 

結果

入院の 2%(6,050 件中 124件)が、RT-PCR により SARS-CoV-2 陽性であった。PCR と比較して、ID NOW の感度および特異度は、それぞれ 83.1%(95%信頼区間[CI]75.4 ~ 88.7)および 99.5%(95%CI 99.3 ~ 99.6)であった。陽性的中率および陰性的中率は、それぞれ 76.9%(95%CI 69.0 ~ 83.2)および 99.6%(95%CI 99.5 ~ 99.8)であった。救急部門到着から ID NOW 結果が出るまでの時間中央値は 59 分であった。

 

結論

ID NOW は、COVID-19 患者を安全にトリアージするための迅速かつ信頼できる補助ツールであり、救急部門のトリアージアルゴリズムに組み込まれれば有効に機能すると考えられる。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

COVID-19 診断のゴールドスタンダードとして RT-PCR が使用されるが、検査結果に時間がかかることから、日本でも救急部門のトリアージに比較的迅速に結果のでる抗原検査(定性・定量)などを使用している施設は少なくない。本研究は ID NOW の COVID-19 トリアージ用ツールとしての診断性能を評価したものである。RT-PCR と比較して偽陰性が多い点が気になるが、ウイルス量が少ないケースが大半であり、ID NOW は COVID-19 トリアージ用ツールの有用な選択肢のひとつになりうる。

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