手術器具の再処理前の高湿度の保管環境によって患者の安全性および器具の耐久性を高められるか?
Can a humid storage environment of surgical instruments before reprocessing increase patient safety and durability of instruments? P. Rubak*, J. Lorenzen, K. Ripadal, A-E. Christensen, D. Aaen, H.L. Nielsen, K. Bundgaard *Aalborg University Hospital, Denmark Journal of Hospital Infection (2022) 122, 64-71
背景
国内および国際的なガイドラインでは、術後、できるだけ速やかに医療器具の再処理を開始することが推奨されており、さらに、術後の手術器具の運搬と保管を高湿度の環境で行うことが推奨されている。乾燥した保管環境は器具の劣化につながるということが懸案事項である。
目的
残存する蛋白質または腐食は、保管環境(乾燥または高湿度)、保持時間または処理サイクル数と関連しているかどうかを評価すること。
方法
エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)ATCC 29212 を添加したヒト血液で汚染した手術器具を対象に、蛋白質性残留物および腐食の範囲を試験した。その後、乾燥または高湿度の条件で、器具を 6、12、24 時間保管した。1 回、25 回、50 回の再処理サイクル後、蛋白質性残留物に関してはオルトフタルアルデヒド(OPA)法を用いて、または腐食に関しては実体顕微鏡、走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型 X 線分光分析を用いて、器具を試験した。
結果
器具上で確認された蛋白質性残留物は 21.5 ~ 54.0 μg であり、腐食は検査領域の 0 ~ 5%に相当した。保管環境と蛋白質性残留物との間(補正平均差 = 0.48、95%信頼区間 −0.42 ~ 1.37、P = 0.30)、または保管環境と腐食との間(P = 0.20)に関連性は特定されなかった。処理サイクル数が多いと、腐食量が大きいことが示された(平均値は、1 サイクル = 0.06%、25 サイクル = 0.52%、50 サイクル = 1.45%)。対照的に、処理サイクル数が多いと、蛋白質性残留物の量が少ないことが示された(P < 0.001)。12 時間の保持時間では、6 時間、24 時間と比較して、蛋白質性残留物の濃度と腐食度のいずれも低いことが確認された。
結論
再処理前の器具の清浄度および耐久性は、保管環境または保持時間には影響されず、代わりに処理サイクル数に影響されると思われる。
監訳者コメント:
手術器具の再処理と器具の清浄度、耐久性について検討した論文である。器具の清浄度や耐久性は処理回数に影響されるという結果であった。実際には、個別の器具ごとの再処理回数の管理には工夫と労力が必要であろうと思われた。
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