分子状ヨウ素はヨードフォアの細胞毒性に関与しない★

2022.04.20

Molecular iodine is not responsible for cytotoxicity in iodophors

C. Freeman*, E. Duan, J. Kessler
*I2Pure Corporation, USA

Journal of Hospital Infection (2022) 122, 194-202


背景

10%ポビドンヨードは最初、「飼いならされたヨウ素」として喧伝された。なぜなら、活性殺生物剤である非錯体化すなわち遊離分子状ヨウ素(I2)の化学的活性が、ルゴール液よりも 30 ~ 50 倍低いからである。I2 がヨウ素の局所的な沈着および刺激の原因であると一般的に考えられている。しかし、疎水性ヨウ素種である I2 の細胞毒性および沈着性について、局所ヨウ素消毒薬におけるすべてのヨウ素の 99.9%を占める他の疎水性ヨウ素種と比較して特徴を明らかにした比較対照研究は行われていない。

 

目的

I2 ヨウ素種の沈着性について他の局所ヨウ素消毒薬と比較すること、鼻腔内の SARS‐CoV‐2 を減少させるために用いられている希釈した10%ポビドンヨードにおいて I2 濃度によって細胞毒性が認められるか否かについて評価すること、ならびに高濃度の I2 が角質層を通過して皮下組織に達する可能性があるか(これは I2 のガス放出についての機械的根拠となり得る)否かについて明らかにすること。

 

方法

水性担体および非水性担体中に錯体化または非錯体化(遊離)I2 を含有する 5 種類の液剤を用いて、I2 と培養哺乳類細胞ならびにヒトおよびブタ皮膚との相互作用について評価した。

 

結果

10%ポビドンヨード中の濃度と比べて 1,500 倍高い I2 濃度(7,800 ppm)は、皮膚に塗布しても刺激および沈着を引き起こさない。I2 は 10%ポビドンヨード中の濃度と比べて 100 倍超の濃度でも細胞毒性は示さず、ルゴール液(約 170 ppm)中と同様の濃度で実質的に皮膚への沈着を引き起こさない。I2 は皮下組織内に到達して数時間留まり、皮膚からガス放出するようである。10%ポビドンヨードとルゴール液は効果の高い局所消毒剤であるが、角質層を介したI2 の拡散を促進することはない。

 

結論

希釈した 10%ポビドンヨードで認められる最大濃度、すなわち約 25 ppm の I2 は、細胞毒性も刺激ももたらさない。I2 の臨床的有用性が限られてきたのは、この広域殺生物剤が、毒性を引き起こすが殺生物活性には寄与しない無数の化学種を含有した酸性水性製剤に組み込まれているためである。I2 を局所塗布すると、皮下組織に達しても刺激は引き起こさない。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

ヨードフォアとはヨウ素をキャリアと結合させて保持し、徐々にヨウ素を遊離させる製品の総称で、ポビドンヨードなどがこれに該当する。希釈した 10%ポビドンヨードを鼻腔内の SARS‐CoV‐2 を減少させる目的で使用されるようになってきているが、本研究では 10%ポビドンヨードで認められる最大濃度では細胞毒性や刺激をおこなさいことが明らかになっている。

 

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