市中呼吸器ウイルスと医療関連感染症:疫学的および臨床的側面★

2022.04.20

Community respiratory viruses and healthcare-associated infections: epidemiological and clinical aspects

G.E. Yamaguto*, F. Zhen, M.M. Moreira, B.M. Montesanti, S.M. Raboni
*Universidade Federal Do Paraná, Brazil

Journal of Hospital Infection (2022) 122, 187-193


背景

医療関連感染症は、罹患、死亡、および入院費に影響を及ぼす。医療関連感染症の全体的負担に対するウイルスの寄与については、十分に記述されていない。

 

目的

呼吸器ウイルスに起因する医療関連感染症の患者における有病率および臨床所見について評価すること。

 

方法

ブラジル南部の 3 次病院 1 施設において観察分析横断研究を実施し、2013 年 1 月から 2019 年 12 月にかけて発生した、ウイルスによる院内呼吸器感染症の患者について評価した。転帰、併存症、入院理由、季節性、ならびに細菌による共感染症の有無について評価した。

 

結果

6 年間に全体で、市中呼吸器ウイルスに感染した医療関連感染症が計 161 例 特定され、患者の 76.4%が年齢中央値 2.8 歳であった(四分位範囲 0.28 ~ 15.4 歳)。免疫抑制患者における主要な併存症は血液腫瘍(46.5%)、骨髄異形成症候群(33.8%)、および造血幹細胞移植(18.3%)であった。非免疫抑制患者において最も多かった併存症は、早産(49.1%)、気道疾患(21.0%)、および先天異常(19.3%)であった。検出されたウイルスは、ヒトライノウイルス(36.6%)、RSウイルス(21.7%)、およびパラインフルエンザウイルス(18.6%)であった。ブラジル南部では致死率は低く(4.6%)、市中呼吸器ウイルスが流行する季節期に医療関連感染症の発生率が高まった。

 

結論

病院環境では高頻度に市中呼吸器ウイルスの循環がみられ、患者だけでなく医療従事者や訪問者が感染する可能性がある。医療環境における予防策についてさらなる指針が必要である。さらに、ケアチームは、院内肺炎患者の鑑別診断においてこれらの原因病原体(ウイルス感染)についても検討し、抗菌薬の使用を制限することを考えるべきである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

血液悪性腫瘍などの免疫低下患者と小児での呼吸器感染症は重大な結果をもたらすことがあるため、呼吸器ウイルス感染症の適切な診断と抗菌薬の適正使用において重要である。近年、Diagnostic stewardship という言葉が使われ、感染症の適切な診断により無用な抗菌薬の使用を避け、抗菌薬適正使用と耐性菌対策に繋げる動きがある。すでにマルチプレックス PCR による約 20 種類の細菌やマイコプラズマを含む主要なウイルスによる呼吸器感染症を検出できる機器が市販され、新型コロナウイルスとの鑑別にも利用されており、これらの検査方法の普及が待たれる。

 

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