病院環境におけるカルバペネム耐性腸内細菌目細菌の院内獲得に対する紫外線による汚染除去戦略の新規適用と効果

2022.03.10

The novel application and effect of an ultraviolet light decontamination strategy on the healthcare acquisition of carbapenem-resistant Enterobacterales in a hospital setting

W.Lowman*, H.R. Etheredge, P. Gaylard, J. Fabian
*University of the Witwatersrand, South Africa

Journal of Hospital Infection (2022) 121, 57-64


背景

多剤耐性病原体(MDRO)の院内獲得の要因として、病院環境の役割の認識が高まっている。紫外線による汚染除去で環境バイオバーデンを最小化することができ、それによって院内獲得を減少させる可能性がある。この効果は代表的な環境の MDRO(例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌[meticillin-resistant Staphylococcus aureus]、バンコマイシン耐性腸球菌[vancomycin-resistant enterococci]、クロストリジオイデス・ディフィシル[Clostridioides difficile])に対して証明されてきたが、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem-resistant Enterobacterales;CRE)の発生率を低下させる役割については不明である。

 

目的

連続紫外線が CRE の院内獲得率に及ぼす影響を評価すること。

 

方法

CRE 獲得リスクが高い診療科において、標準的な清掃に連続紫外線による汚染除去を加えた 26 か月の実用的前向き介入試験を実施した。12 か月のベースライン期間に続いて連続紫外線を導入し、ウォッシュイン期間は 2 か月であった。実施には退院時の最終的な汚染除去および新規の使用中のプロトコールが含まれ、それによって 48 時間以上占有された部屋は、患者の入院中に汚染除去された。中断時系列回帰を用いて、介入期間中の CRE 発生密度率をベースライン期間と比較した。比率は病棟/入院時の保菌率で補正し、連続紫外線プロトコールに従って解析した。

 

結果

使用中の連続紫外線プロトコールは、CRE 入院率で補正した場合に、CRE 発生密度率と有意な負の相関を示した(P = 0.0069)。CRE 発生密度率は介入期間中に有意に低下した(P = 0.042)。非介入の診療科では、病棟および/または入院時の保菌率で補正した場合に、発生密度率の変化を示さなかった。

 

結論

連続紫外線による汚染除去は、使用中のプロトコールとともに実行した場合、CRE の院内獲得を減少させる可能性がある。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

紫外線照射が CRE の減少に寄与した可能性を示唆する論文。OXA-48like の CRE に限られていることや、紫外線照射装置の使用がかなり限定的であったことなどが研究の限界と併記されているが、一方で研究期間中は紫外線照射以外の追加の感染対策は行われなかったことが研究の強みとして記載されている。個人的には棒グラフの色が紫色(紫外線の色?)だったことが刺さった。

 

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