オーストラリアの医療従事者における SARS-CoV-2 パンデミックの経験:ストレス因子から保護因子まで★★
Experiences of the SARS-CoV-2 pandemic amongst Australian healthcare workers: from stressors to protective factors J.Broom*, L. Williams Veazey, A. Broom, S. Hor, C. Degeling, P. Burns, M. Wyer, G.L. Gilbert *Sunshine Coast Health Institute, Australia Journal of Hospital Infection (2022) 121, 75-81
背景
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス‐2(SARS-CoV-2)によるパンデミックは、世界的に医療システムに対して危機的な困難をもたらしている。医療従事者の経験を調べることは、現在および今後のパンデミック対応を最適なものにする上で重要である。
目的
SARS-CoV-2 パンデミックに関するオーストラリアの医療従事者の経験を、報告されているストレス因子と保護因子の対照に焦点を当てて詳細に調べること。
方法
オーストラリアの医療従事者 63 名を対象に、個別に面接を行った。一連の専門家チームおよび作業スタッフを含めた。テーマ分析を実施した。
結果
テーマ分析により、主に以下に基づくストレス因子が特定された:エビデンスの不足、またはエビデンスの変化と、これによりガイドラインの不在、またはガイドラインに対する不信につながること、医師の自律性とコントロール感におけるこれまでに例のない変化、ならびにコミュニケーションとサポートの不足。主な保護因子には以下が含まれた:権威ある臨床リーダーまたは認められた臨床組織による明確な指針の作成、個人間でのサポート、ならびに強力なチームワーク、リーダーシップ、および組織として対応の準備ができているという信頼感。
結論
本研究は、パンデミックへの対応下において医療従事者に精神的ストレスをもたらす主要な組織的要因に関する知見を提供しており、また保護因子の経験を記述している。これまでにない不確実性、恐怖、および急速な変化を経験している医療従事者は、明確なコミュニケーション、強力なリーダーシップ、認められた専門家グループや専門家により支持されたガイドラインに頼っており、個人間のサポートに対してより信頼を置くようになっている。チーム、支援グループおよび組織のレベルにおけるリーダーシップおよびコミュニケーションのための構造化された戦略、心理的サポートの提供、ならびに指揮命令系統の中央化がもたらし得る潜在的な負の影響への配慮により、パンデミック環境下で働くことによる極度のプレッシャーを軽減することであろう。
監訳者コメント:
COVID-19 パンデミックは、「災害」であると同時に、犠牲者が拡大してゆくという感染症であるが故に、現場の医療従事者がうけたストレスは計り知れない。本論文では「不確実で予測不能」であることへの不安が大きなストレス因子として明確になっており、一方で災害時に必要とされるリーダーシップやガイドライン、心理的サポートなどが負の因子を和らげることも明らかとなった。
同カテゴリの記事
SARS-CoV-2 viability on different surfaces after gaseous ozone treatment: a preliminary evaluation
E. Percivalle*, M. Clerici, I. Cassaniti, E. Vecchio Nepita, P. Marchese, D. Olivati, C. Catelli, A. Berri, F. Baldanti, P. Marone, R. Bruno, A. Triarico, P. Lago
*Fondazione I.R.C.C.S. Policlinico San Matteo, Italy
Journal of Hospital Infection (2021) 110, 33-36
Comparing mask fit and usability of traditional and nanofibre N95 filtering facepiece respirators before and after nursing procedures L.K.P. Suen*, Y.P. Guo, S.S.K. Ho, C.H. Au-Yeung, S.C. Lam *The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong Journal of Hospital Infection (2020) 104, 336-343
Costs and resource utilization patterns in surgical site infections: a pre-COVID-19 perspective from France, Germany, Spain, and the UK J. Salmanton-García*, C. Bruns, J. Rutz, M. Albertsmeier, J. Ankert, L. Bernard, C. Bataille, E. Couvé-Deacon, M. Fernández-Ferrer, J. Fortún, A. Galar, E. Grill, T. Guimard, A.Y. Classen, J.J. Vehreschild, J. Stemler, J-H. Naendrup, J. Hampl, B. Tallon, R. Sprute, J.P. Horcajada, J. Mollar-Maseres, P. Muñoz, M.W. Pletz, F. Serracino-Inglott, A. Soriano, T.O. Vilz, H. Seifert, O.A. Cornely, S.C. Mellinghoff, B.J. Liss, S.M. Wingen-Heimann, on behalf of the SALT study group *University of Cologne, Germany Journal of Hospital Infection (2024) 147, 123-132
Clinical and microbiological effectiveness of pulsed-xenon ultraviolet light disinfection in a neonatal intensive care unit in Japan S. Komamizu*, Y. Yamamoto, K. Morikane, Y. Kuwabara, M. Kondo, K. Tatebayashi, T. Koyama , D. Terazawa *Gifu Prefectural General Medical Center, Japan Journal of Hospital Infection (2025) 156, 13-16
In which cases of pneumonia should we consider treatments for Stenotrophomonas maltophilia?
W. Imoto*, K. Yamada, G. Kuwabara, K. Yamairi, W. Shibata, K. Oshima, K. Nakaie, T. Watanabe, K. Asai, Y. Kaneko, T. Kawaguchi, H. Kakeya
*Osaka City University Graduate School of Medicine, Japan
Journal of Hospital Infection (2021) 111, 169-175