開放区画から個室型の新生児集中治療室への移行が、多剤耐性病原体の保菌率に及ぼす影響
Impact of transition from open bay to single room design neonatal intensive care unit on multidrug-resistant organism colonization rates A.van der Hoeven*, V. Bekker, S.J. Jansen, B. Saccoccia, R.J.M. Berkhout, E. Lopriore, K.E. Veldkamp, M.T. van der Beek *Leiden University Medical Center, the Netherlands Journal of Hospital Infection (2022) 120, 90-97
背景
新生児集中治療室(NICU)のデザインが、多剤耐性病原体(MDRO)獲得に及ぼす影響は十分に実証されていない。
目的
NICU 入室乳児における MDRO および第 3 世代セファロスポリン耐性菌の保菌率に対して、個室ユニットと開放区画ユニットが及ぼす影響を比較検討すること。
方法
2017 年 5 月の前後 2 年間に3 次大学病院の NICU に入室し、開放区画ユニットから個室ユニットに移行した全乳児を対象に、後向きコホート研究を実施した。MDRO 保菌者をスクリーニングするために、咽頭と直腸の培養物を週 1 回採取した。MDRO と第 3 世代セファロスポリン耐性菌の保菌率(全保菌者の割合および 1,000 患者日あたりの発生密度)を、開放区画ユニットと個室ユニットの期間で比較した。
結果
NICUの乳児 1,293 例の発生率分析では、基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌保菌者 2.3%を含む MDRO 保菌者は 3.2%(開放区画ユニット 2.5%、個室ユニット 4.0%、有意差なし)で、第 3 世代セファロスポリン耐性菌保菌者は 18.6%(開放区画ユニット 17%、個室ユニット 20%、有意差なし)であった。1,000 患者日あたりの MDRO 発生密度は、開放区画ユニット入室乳児(1.56)と個室ユニット入室乳児(2.63)との間で差が認められなかった。
結論
当院における NICU の開放区画ユニットから個室ユニットへのデザインの移行は、MDRO または第 3 世代セファロスポリン耐性菌の保菌率の低下と関連しなかった。NICU などの高リスク部門での耐性菌の獲得および拡大の予防のほかに、最適な病棟デザインに関してもさらなる研究が必要である。
監訳者コメント:
耐性菌対策では多床室(開放区画)より個室の方が明らかに有効であると思われているだけに、この結果は意外である。筆者らは、耐性菌の分離率が比較的低く、部屋の変更による変化を検出するサンプル数が得られなかったかもしれないと考察している。また基本的にはグラム陰性桿菌の耐性菌を評価しているため、MRSA ならまた違うかもしれない。
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