高性能エアーサンプラーにより調査した家庭および病院環境の空中浮遊 SARS-CoV-2★

2022.01.31

Airborne SARS-CoV-2 in home and hospital environments investigated with a high-powered air sampler

P. de Man*, M.A. Ortiz, P.M. Bluyssen, S.J. de Man, M-J. Rentmeester, M. van der Vliet, E-J. Wils, D.S.Y. Ong
*Franciscus Gasthuis & Vlietland, the Netherlands

Journal of Hospital Infection (2022) 119, 126-131

背景

最初の目的は、最近感染した個人が着用したフェイスマスクが、SARS-CoV-2 の空気伝播に及ぼす影響を研究することであったが、その結果を受けて、自宅の感染者の近傍と集中治療室(ICU)の感染患者の近傍とで、空気サンプル中の SARS-CoV-2 の存在の比較を進めるきっかけとなった。

 

目的

空気中 SARS-CoV-2 の存在について、感染者の自宅と、エアロゾル発生の可能性のある各種医療手技を受けている COVID-19 重篤患者が在室する ICU において評価すること。

 

方法

サンプルフィルターとして機能するサージカルフェイスマスクを備えた家庭用電気掃除機を利用する高容量エアーサンプラー法を開発した。このフィルターから SARS-CoV-2 RNA を回収し、ポリメラーゼ連鎖反応により解析した。エアーサンプラー周囲の空気流を可視化するために霧化実験を実施した。自宅においてフェイスマスク着用または非着用の感染者の近傍の空気サンプルを採取した。これらの感染者から離れた環境中の空気サンプルと、さらにエアロゾル発生の可能性のある医療手技を受けている ICU 患者近傍のサンプルも採取した。

 

結果

フェイスマスクの着用により、エアーサンプラーへの霧の流れが滞り、低減する。感染者が着用したフェイスマスクについて、症例の 71%で SARS-CoV-2 RNA の存在が確認された。マスク実験にかかわらず、空気サンプルに SARS-CoV-2 が検出された。空気サンプル陽性率は、自宅(41 件中 29 件、70.7%)のほうが、ICU(17 件中 4 件、23.5%)よりも高かった(P < 0.01)。

 

結論

電気掃除機をベースとしたエアーサンプラー法の使用により、空気サンプル中の SARS-CoV-2 RNA が検出できた。最近感染した個人の自宅環境の空気サンプルは、ICU においてエアロゾル発生の可能性のある医療手技中に採取したものと比較して、SARS-CoV-2 RNA がほぼ 3 倍多かった。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

サージカルマスクは正面へのエアロゾル噴出は抑えるがどうしても左右・上下への漏れが発生する。人の口・鼻からのエアロゾル発生を極限まで抑えるための防具は、その目的で規格はなく、一部メーカーがそのための防具を供給しているが普及はしていない。ICU は空気清浄度を保つための換気回数や局所ろ過システムを配備しているため、ウイルス量が希釈されていることは容易に想像がつく。個人の自宅においても、開窓やサーキュレーターによる戸外強制排気などにより同様な目的を達することができるが室内気温の管理が難しい。

 

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