高齢者に対する半関節形成術時の周術期偶発性低体温予防においてブランケット式加温は温風式加温の有効な代替法である★

2021.12.31

Resistant fabric warming is a viable alternative to forced-air warming to prevent inadvertent perioperative hypothermia during hemiarthroplasty in the elderly

M. Kümin*, C.I. Jones, A. Woods, S. Bremner, M. Reed, M. Scarborough, C.M. Harper
*University of Oxford, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 118, 79-86


背景

手術部位感染症(SSI)は、周術期低体温により偶発的に発生することがある。これは、患者に対する積極的加温によって予防可能である。しかし、加温技術の比較を行った結果は矛盾している。これらの研究は、ほとんどが待機的手術に基づき、少人数の患者を対象とし、市場シェアの大きい温風式加温を主に用いている。さらに、低体温の定義についても問題があり、加温装置に関するシステマティックレビューでは、加温によるベネフィットを研究するにはより厳格な温度のコントロールが必要であると結論付けている。

 

目的

無作為化試験に参加して、半関節形成術後に加温を実施され、体温を記録するためにゼロ熱流束温度計による連続的測定を受けた高齢者の大規模サブセットを対象に、深部体温について詳細に分析すること。

 

方法

回帰モデルを用いて、加温群における固定効果と体温に関連する共変量を、以前の臨床試験において温風式加温またはブランケット(電気毛布)式加温に無作為化された参加者 257 例について比較した。

 

結果

ブランケット(電気毛布)式加温群では温風式加温群と比較して体温が 0.08°C低く、累積低体温スコアは 1.87°C低かった。36.5°C未満または 36.0°C未満とした場合の低体温患者の割合には差はなかった。

 

結論

本研究は、全身麻酔ではなく主として局所麻酔下で手術を受けた患者を対象に、正確な体温測定値を提供した初の研究である。その結果、半関節形成術の周術期偶発性低体温を予防するために、ブランケット(電気毛布)式布加温は温風式加温の有効な代替法であることが示された。臨床的に重要な転帰に関して、患者に対する加温のベネフィットを評価するためには、さらなる研究が必要である。

 

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

周術期の低体温は術後の臨床経過不良につながり、術後回復の遅延、合併症の増加、術後感染、心合併症を引き起こし、深部体温が 0.5°C低下すれば失血量が増加し、輸血量が増えることが示されている。関節置換手術においても低体温が感染症合併と関連していることがわかっており、正常体温の維持が重要とされているが、整形外科手術における低体温の発生率はいまだに高い。温風式加温が最も効果的で非侵襲的とされているが、本研究ではブランケット(電気毛布)式加温と温風式加温との比較で、前頭部の皮膚から深部体温を測定するゼロ熱流束温度計による測定の結果、両者がほぼ同等であるとみている。同時に局所麻酔下におけるゼロ熱流束温度計による連続的深部温度測定は低体温予防に重要である。

 

訳者注)ゼロ熱流束温度計:患者の正確な深部温度を測定する方法は、食道・直腸プローブあるいは動脈カテーテルなどの侵襲的方法があるが、非侵襲的方法は測定精度が落ちることが難点であったが、この温度計は皮膚に装着して深部温度を正確に測定することができる装置である。

 

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