パルス洗浄は手術部位感染症のリスクを低減させるか?システマティックレビューおよびメタアナリシス

2021.12.31

Does pulsed lavage reduce the risk of surgical site infection? A systematic review and meta-analysis

M.F. Bath*, R. Suresh, J. Davies, M.R. Machesney
*Barts Health NHS Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2021) 118, 32-39


背景

手術部位感染症(SSI)は依然として、よくみられる重大な術後合併症である。大部分の外科医が縫合中に何らかの方法で創部洗浄を使用するが、SSI 発生率に及ぼす影響については議論されている。加圧洗浄、いわゆるパルス洗浄の使用に関する複数の予備研究では、SSI リスクを低減する潜在的な有益性が示唆されている。

 

目的

パルス洗浄の使用と対照とで比較する術後 SSI 発生率を報告した研究の評価を目的として、PRISMA ガイドラインに準拠したシステマティックレビューを実施した。

 

方法

2021 年 1 月 1日までに発表されたあらゆる種類の研究を含めた。ランダム効果モデルを用いて、Mantel-Haenszel 統計解析により各対象研究のオッズ比(OR)を算出した。腹部手術のみサブ解析も実施した。

 

結果

整形外科手術または一般外科手術のいずれかに該当する 11 報の研究が選択基準を満たした。1,875 例の患者が含まれ、パルス洗浄群 816 例、対照群 1,059 例であった。全体的な研究の質は低かった。パルス洗浄の使用による SSI 発生率は有意に低かった(OR 0.39、95%信頼区間[CI]0.25 ~ 0.62、P < 0.0001)。腹部手術のみのサブアナリシスでは、パルス洗浄により SSI 発生率のさらなる改善が示された(OR 0.32、95%CI 0.21 ~ 0.49、P < 0.0001)。

 

結論

パルス洗浄は手術による SSI 発生率を有意に低減させ、その効果は腹部手術においてもっとも顕著であった。とはいえ、現行の研究の質は低い。パルス洗浄が SSI 低減に寄与するという臨床的かつ経済的利益の可能性を十分に評価するために、無作為化比較試験のデータが不可欠である。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

整形外科、一般外科を含めたシステマティックレビューであるが、対象論文は11報であり、本論文の著者の提言にあるように、パルス洗浄の評価には質の高い研究論文が必要であると思われた。

 

 

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