成人の脊椎手術後における手術部位感染症に対する病院ベースのサーベイランスシステムの正確度:ベイズ潜在クラス分析★
Accuracy of hospital-based surveillance systems for surgical site infection after adult spine surgery: a Bayesian latent class analysis O. Lasry*, T. Ailon, R. Charest-Morin, N. Dea, M. Dvorak, C. Fisher, A. Gara, B. Kwon, E. Lloyd-Smith, S. Paquette, T. Wong, J. Street *University of British Columbia, Canada Journal of Hospital Infection (2021) 117, 117-123
背景
脊椎の手術部位感染症(SSI)は病的で、費用のかかる合併症である。疾患負担および SSI リスクを軽減する介入の影響を適切に記述するためには、正確なサーベイランスシステムが必要とされる。残念ながら、SSI の症例定義にばらつきがあること、完全な標準的症例定義が存在しないこと、およびデータソースが不均一であることにより、SSI サーベイランスを実施するための統一的なアプローチは存在していない。
目的
脊椎手術後の SSI を捕捉する 4 つの独立したデータソースの正確度を評価すること、ならびに測定誤差で補正した SSI 発生率を推定すること。
方法
ベイズ潜在クラスモデルにより、各データソースについて、SSI の特定および測定誤差で補正した SSI 発生率の推定を行ううえでの感度/特異度の評価を行った。用いた 4 つのデータソースは、退院要約データベース(DAD)、全国外科品質改善プログラム(NSQIP)データベース、カナダ感染予防管理(IPAC)データベース、および 脊椎有害事象重症度 データベースであった。
結果
2017 年に患者計 904 例が脊椎手術を受けた。最も感度の高かったデータソースは DAD(0.799、95%信用区間[CrI]0.597 ~ 0.943)、最も感度の低かったのは NSQIP(0.497、95%CrI 0.308 ~ 0.694)であった。最も特異度の高かったデータソースは IPAC(0.997、95%CrI 0.993 ~ 1.000)、最も得度の低かったのは DAD(0.969、95%CrI 0.956 ~ 0.981)であった。測定誤差で補正した SSI 発生率は 0.030(95%CrI 0.019 ~ 0.045)であった。DAD を用いた粗発生率は過剰に推定しており、他の 3 つのデータソースは過小に推定していた。
結論
脊椎手術集団における SSI サーベイランスは、測定誤差を考慮すれば、いくつかのデータソースを用いて実施可能である。
監訳者コメント:
カナダの医療機関で行われた独立した 4 つのデータソースを用いた脊椎手術集団における SSI サーベイランスの評価の研究である。異なった症例定義のサーベイランスの結果は直接比較することはできないが、各データソースに固有の測定誤差を考慮すれば、比較が可能となるとしている。なお、日本では JANIS や JHAIS などのいくつかの SSI サーベイランスがあるが、いずれも CDC/NHSN マニュアルに準拠しており、定義に大きな違いはない。
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