ブラジルの統合医療システムに所属する大学病院 50 施設において推定した医療関連感染症が集中治療室に及ぼす経済的影響★

2021.11.30

Financial impact of healthcare-associated infections on intensive care units estimated for fifty Brazilian university hospitals affiliated to the unified health system

S.F. Osme*, J.M. Souza, I.T. Osme, A.P.S. Almeida, A. Arantes, C. Mendes-Rodrigues, P.P. Gontijo Filho, R.M. Ribas
*Federal University of Uberlândia, Brazil

Journal of Hospital Infection (2021) 117, 96-102


背景

諸研究から、医療関連感染症(HAI)は医療における重要な問題であること、またそれが集中治療室(ICU)に対して大きな経済的影響を及ぼし得ることが示されている。

 

目的

ブラジルの統合医療システム(Sistema Único de Saúde:SUS)に所属する教育病院 50 施設において、最も重大な HAI に関連する直接費用を推定すること。

 

方法

HAI による直接費用を推定するため、以下のモンテカルロシミュレーションモデルをデザインした。まず、各 HAI について、重症患者 949 例(HAI を有さない 800 例、および HAI を有する 149 例)から成るコホートに基づいて、疫学的および経済的変数を決定した。次いで、ブラジルの ICU 患者における HAI の有病率の3 つのシナリオ(29.1%、51.2%、および61.6%)を用いてシミュレーションを行った。さらに、大学病院 50 施設における HAI による年間直接費用のシミュレーションを行った。

 

結果

HAI 患者は、HAI を有さない患者と比べて ICU 滞在日数が 16 日長く、これに伴う追加の直接費用は 13.892 米ドルであった。HAI の有病率をゼロとした仮定シナリオでは、病院 50施設 の成人 ICU における入院患者 26,649例における医療の年間直接費用は 112,924,421米ドルであった。29.1%としたシナリオでは約 5,600 万米ドルの増加、61.6%としたシナリオでは 1 億 4,700 万米ドルの増加がみられた。直接費用に対する影響は、HAI の有病率 10%から有意となり、ここから有病率が 1%増加するごとに 2,824,817 米ドルの増加がみられる。

 

結論

本解析は、頑健かつ最新の推定結果を提供しており、HAI がブラジルの医療システムに大きな経済的負担を及ぼしていること、また入院患者の入院期間の延長に寄与していることを示している。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

ブラジルにおける HAI による ICU での費用増加を評価したものであり、非常に具体的な数値が示されている。日本においてもこのような調査が実施され、HAI による費用増加を明確に出し、HAI 予防の重要性を患者の死亡率や入院期間だけでなく、経済的側面からの評価も必要であろう。

 

 

同カテゴリの記事

2009.09.30

Microbiology of wound infections among hospitalised patients following the 2005 Pakistan earthquake

2011.04.01

Hospital-wide survey of the use of central venous catheters

2012.09.30

Compartmentalization of wards to cohort symptomatic patients at the beginning and end of norovirus outbreaks

2014.05.31

A 10-year survey of fungal aerocontamination in hospital corridors: a reliable sentinel to predict fungal exposure risk?

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ