スイスの病院における抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する抗菌薬使用量は、抗菌薬適正使用支援策と関連する
Consumption of anti-meticillin-resistant Staphylococcus aureus antibiotics in Swiss hospitals is associated with antibiotic stewardship measures L. Renggli*, M. Gasser, C. Plüss-Suard, A. Kronenberg *University of Bern, Switzerland Journal of Hospital Infection (2021) 117, 165-171
背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して活性を示す抗菌薬の使用量については、欧州の多数の研究で報告されている。しかしながら、使用量の基本的な予測変数は、まだ十分に分かっていない。
目的
スイスにおける抗 MRSA 抗菌薬(ダプトマイシン、静注用グリコペプチド系、リネゾリド)の使用量について経時的に記述するとともに、基本的な予測変数を特定すること。
方法
スイスの病院 21 施設において 11 年間にわたり(2009 年から 2019 年)、多施設共同後向き観察研究を実施した。抗 MRSA 抗菌薬の使用量に影響する地域特有ならびに病院特有の予測変数を特定するために、多重線形回帰モデルを構築した。
結果
抗 MRSA 抗菌薬の使用量は 2009 年から 2019 年の間に増加し、1,000 在院患者延数あたりの 1 日仮想平均維持量は 12.7 から 24.5 になった(+93%)。全研究期間のデータを含む最初のモデルでは、以下の変数が抗 MRSA 抗菌薬の高使用量と関連した:MRSA 症例数(P < 0.01)、年齢(P < 0.01)、病院の種類(3 次大学病院対その他、P < 0.01)、病院の部門(集中治療室対その他、P < 0.01)、言語圏(フランス語対ドイツ語、ドイツ語対イタリア語、P < 0.01)。2019 年に実施された病院の方針に関するパラメータデータを含む第 2 のモデルでは、抗菌薬適正使用支援グループの存在(P < 0.01)と処方の制限(P < 0.01)が抗 MRSA 抗菌薬使用量と関連した。
結論
本研究では、抗菌薬適正使用支援グループの存在と処方制限の実施の両方、すなわち病院単独で管理できる因子が、抗MRSA 抗菌薬の低使用量と関連することが示された。
監訳者コメント:
抗菌薬適正使用支援体制が現状の医療には必要であるとの結論である。抗菌薬は多くの臨床医が処方する薬剤であり、その意味ではどの医師においても適正使用を実践できる医師を育成することが次へのステップとなる。
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